Information

2019.7

相続ミニコラムを更新しました。

2015.11.4
相続税専用のホームページを開設しました。


相続税・贈与税シミュレーション
税務・会計・医業・組織再編・公益法人はお任せください。税理士法人アズールオフィシャルHP

相続税ミニコラム

#58 「教育資金の一括贈与非課税措置」、「結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置」の見直し
#57 相続税調査の状況について
#56 地積規模の大きな宅地の評価
#55 成年後見人「親族が望ましい」と最高裁
#54 財産債務調書
#53 贈与税の住宅取得等資金の特例を受けた場合の注意点
#52 個人版事業承継税制
#51 改正相続法(民法)の適用関係
#50 預貯金債権の仮払い制度
#49 相続税の連帯納付義務とは
#48 相続人に非居住者がいる場合の申告手続
#47 災害を受けた場合の相続税・贈与税の取扱い
#46 贈与と資産運用
#45 遺言代用信託の活用
#44 民法改正と税金
#43 相続を放棄した者が受け取った生命保険金には相続税はかかるか
#42 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合
#41 贈与税の配偶者控除と生前贈与加算
#40 教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
#39 平成30年度税制改正~一般社団法人を使った相続税の課税逃れ 対策強化へ
#38 負担付贈与をした場合の課税はどうなるのか
#37 贈与税のかからない財産とは
#36 相続税における障害者に対する制度
#35 相続税の配偶者控除
#34 住宅取得等資金の贈与
#33 より使いやすくなった!事業承継税制2
#32 より使いやすくなった!事業承継税制
#31 遺言により相続財産を寄附した場合の相続税の課税関係
#30 相続税の納付の方法
#29 相続した財産を譲渡した場合
#28 取引相場のない株式の評価の見直し
#27 相続税等の納税義務者の見直し
#26 孫が受取人の生命保険金
#25 寄与分を取得した相続人に対する課税
#24 配偶者に対する相続税の軽減
#23 相続人以外の者が財産を取得した場合
#22 みなし相続財産~生命保険~
#21 相続人の中に成年被後見人がいる場合
#20 相続人の中に未成年者がいる場合~Part2
#19 退職金と弔慰金
#18 相続人の中に未成年者がいる場合
#17 相続税の申告期限
#16 相続時精算課税
#15 相続税の税額控除
#14 相続開始前3年以内に贈与を受けた財産
#13 相続の承認・放棄
#12 短期間に重ねて相続があった場合
#11 相続税の納税義務者
#10 相続税の加算
#9 相続財産から控除できる債務
#8 相続税がかからない財産
#7 遺言によってできること
#6 相続税がかかる財産の範囲
#5 相続が発生した場合の被相続人に係る確定申告(準確定申告)について
#4 法定相続人と法定相続分
#3 相続税の基礎控除額
#2 名義預金にご用心
#1 相続人の範囲と順位

#58 「教育資金の一括贈与非課税措置」、「結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置」の見直し

 「教育資金の一括贈与非課税措置」と「結婚・子育て資金の一括贈与非課税
措置」は、高齢者世代の保有する家計資産を教育資金が必要な子育て世代や
結婚・出産にあたり資金が必要な若年世代に早期に移転させることにより消費
を拡大させ、経済を活性化させる政策の一環として、それぞれ平成25年度・
平成27年度税制改正で創設されたものです。
 令和元年度税制改正では、格差の固定化につながらないよう、機会の平等の
確保に留意した見直しが必要との指摘があったことなどを踏まえ、要件の見直
しが行われた上で、適用期限が令和3年3月31日まで延期されました。
 
 主な改正点は次のとおりです。
 (1)共通の改正点 受贈者の所得要件の追加
     贈与があった年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超え
    る場合には、この制度の適用を受けることができなくなりました。
 (2)教育資金の一括贈与非課税措置の改正点
     1.教育資金の範囲の見直し
        23歳以上の者の教育資金の使途について一定のものに限定
       されました。
     2.贈与者が死亡した場合の残高に対する相続税課税
        贈与者の相続開始前3年以内に行われた贈与について、一定
       の場合を除き、相続開始時における一定の残高が相続財産に加
       算されることになりました。
     3.教育資金口座に係る契約の終了事由の見直し
        教育資金管理契約は受贈者の年齢が30歳に達する日におい
       て原則終了となりますが、一定の場合には延長することとされ
       ました。
 
 改正前の上記2つの贈与非課税措置には、贈与者の死亡時の残高について相
続財産に加算する・しないという大きな違いがありました。しかし、この改正
により教育資金の一括贈与非課税措置においても残高のうち一定の金額は相続
財産に加算されることになりましたので、相続税額を計算する際も注意が必要
です。

 改正の詳細や適用時期については、下記国税庁HPのパンフレットにわかりや
すく記載されています。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/pdf/01.pdf

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/pdf/01.pdf
                                                     

▲ページトップへ戻る

#57 相続税調査の状況について

 平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以後の相続から基礎控除額の
引下げや税率構造の見直しが行われ、平成27年分以後の相続税の申告件数が大
幅に増加しています。

 国税庁が公表している最新の情報では、全国で平成29年中に亡くなられた方
は約134万人、このうち相続税の課税対象となった方は約11万2,000人で課税
割合は全国平均で8.3%となりました。平成26年においては4.4%でしたが、平
成27年に8.0%となってからも上昇し平成28年の8.1%より0.2ポイント増加し
ました。
 (参考)平成29年分名古屋国税局管内の課税割合
      ・愛知県・・・13.9%(平成26年8.1%)
      ・岐阜県・・・7.9%(平成26年4.3%)
      ・三重県・・・7.0%(平成26年3.2%)

 また申告する相続財産の構成比としては、土地が36.5%(平成26年41.5%)
現金・預貯金等31.7%(平成26年26.6%)となり、現金・預貯金等の割合が
高まりつつあることが分かります。

 相続税の実地調査の件数は1万2,576件で、このうち申告漏れ等の非違があっ
た件数は1万521件で非違割合は83.7%となっていて、全体で3,523億円(1件
当たり2,801万円)の申告漏れ財産を把握しています。
 申告漏れ財産の内訳は、現金・預貯金等が1,183億円で最も多く、続いて有
価証券527億円、土地410億円の順となっています。

 国税庁においては、実地による税務調査を適切に実施する一方で、このよう
な申告件数の増加に対応するため実地調査以外の簡易な接触を積極的に行って
います。保有する資料情報等から相続税の無申告が想定される納税者へ書面照
会を行ったり、調査すべき問題点が限られている事案に対しては電話や来署依
頼などにより自発的な修正を求めているということです。

 なお簡易な接触の件数は1万1,198件でこのうち申告漏れ等の非違及び回答等
があった件数は6,995件で、この割合62.5%となっています。

                                                     
▲ページトップへ戻る

#56 地積規模の大きな宅地の評価

 相続財産の評価額を計算するうえで、土地の評価額の計算は少し複雑です。
簡単な方法ですと、路線価×土地の面積=評価額となりますが、実際には地形
や周辺の状況に応じて評価額を算出します。
 さらに土地の評価の中で、面積が広大な宅地については、別途、広大地評価
と呼ばれる評価方法が定められていました。どれくらいの広さかというと、三
大都市圏(東京、名古屋、大阪)の場合は500平米以上、それ以外の市街化区域
の場合は1,000平米以上、市街化区域ではない場合には3,000平米以上が対象で
す。ただ広い土地であれば適用できるかというと、そうではなく、広大地と認
定される条件を満たさなければいけません。
 この広大地評価は平成30年度税制改正で廃止され、平成30年以降は簡単に判
定できる「地積規模の大きな宅地の評価」に変わりました。
 この改正により、今まで適用要件があいまいであったものが下記の要件へと
明確化されました。

 <地積規模の大きな宅地>
  (1)三大都市圏は500平米以上の宅地、三大都市圏外の地域は1,000平米
     以上の宅地
  (2)路線価地域については、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区
     に所在する宅地
  (3)次のいずれにも該当しない
     ・市街化調整区域(都市計画法に規定する開発行為を行うことがで
      きる区域を除く)に所在する宅地
     ・都市計画法に規定する工業専用地域に所在する宅地
     ・容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域
      に所在する宅地
     ・大規模工場用地

 <評価方法>
   路線価×各種補正率(注1)×規模格差補正率(注2)×地積

 (注1)不整形地補正率などの地形を考慮した補正率
 (注2)宅地の所在する地域と面積を考慮した補正率

 愛知県内は、豊田市と岡崎市の一部を除きすべての市町村が三大都市圏に該
当しますので、上記要件に該当する宅地がありましたら、地積規模の大きな宅
地の評価の適用を受けることができます。また相続財産のみならず、自社株評
価の際の土地の評価についても適用できます。

                                                     
▲ページトップへ戻る

#55 成年後見人「親族が望ましい」と最高裁

 最高裁判所は先月18日、認知症などで判断能力が十分でない人の生活を支え
る成年後見人制度について、「後見人には身近な親族を選任するほうが望ま
しい」との考え方を示しました。成年後見人制度は2000年に創設され今年で
20年目の節目を迎えています。制度導入以来、利用者数は年々増加していま
すが、認知症高齢者が500万人超といわれる状況で、利用者数は約21万人にと
どまっているのが実情です。

 これまで、各家庭裁判所は、親族より専門職資格者(弁護士・司法書士等)
の方が成年後見事務に明るく、知識も豊富であることや親族の不正を防ぐ観点
から専門職資格者の選任を増やしてきました。
 しかし、専門職資格者が成年後見人になるということは、報酬や経費がかか
ることとなります。成年後見人制度は、原則的に本人が死亡するまで続くもの
です。本人が長生きすればすれほど報酬が重く肩にのしかかることになり
ます。もちろん報酬は本人負担であり、家庭裁判所が決定する金額なので
親族が支払うものではありませんが、専門職資格者に成年後見人を依頼する際
のネックとなっています。

◆最高裁による方針変更の文書
  最高裁は、基本的な考え方として、後見人にふさわしい親族など身近な支援
  者がいる場合は、本人の利益保護の観点から親族らを後見人に選任すること
  が望ましいと提示しました。
  さらに、今までは後見人の申請をすると取り下げや後見人の交代が原則でき
  ませんでしたが、状況の変化に応じて柔軟に交代・追加選任等を行えるよう
  にすることも提示しています。
  方針変更の理由の1つには、専門職資格者による財産の横領事件が後を絶た
  なかったことはあると思います。しかし、親族を後見人にすれば、親族によ
  る横領が防げるかというと、決してそんなことはなく、むしろ、そもそも親
  族の不正を防ぐ観点から専門職資格者を選任していたのですから、親族が後
  見人になることにより、監視の目が届かず、横領行為はより目視しづらい状
  況になってしまうとも考えられます。
  しかしながら、横領問題よりも報酬費用の負担が一番の理由のような気がし
  ます。これまで、後見人制度を利用せざるを得ないけれども、毎月負担する
  報酬がネックとなっていた人たちにとっては制度を利用するかどうかを再考
  するいい機会が訪れたと思います。

                                                     
▲ページトップへ戻る

#54 財産債務調書

 この記事が皆様の所に届くのは平成30年分の確定申告が終わった頃です。
皆様のご協力により無事に申告業務を終えられた事、感謝申し上げます。
 
 さて、確定申告に際し会計事務所は皆様に色々な書類をいただき、その年の
所得や財産について様々な事をお聞きして申告書類を作り上げていくわけで
すが、会計事務所にとって一番悩ましいのが「財産債務調書」です。これは
平成27年度の税制改正により創設されたものです。以前も所得金額が
2,000万円を超える者については、「財産債務明細書」の提出が求められ
ていましたが、その保有財産の記載内容は概括的であり、提出率も4割程度と
低かったようです。平成27年度税制改正で、国外転出をする場合の譲渡所得
等の特例が創設されたこともあり、従前の制度が見直されることとなりました。
 こうして従来の所得基準(所得金額が2,000万円超)に資産基準(総資
産3億円以上または有価証券等1億円以上)を追加して対象者を限定した上で
財産の詳しい内容を時価で記載させるなど記載内容を充実させた「財産債務調
書制度」が整備されました。
 この制度は、適正な記載及び提出があった場合には、過少申告加算税等が軽
減されるインセンティブがある一方、期限内に調書を提出しなかった場合や
記載すべき財産又は債務の記載がない場合(重要なものの記載が不十分と認め
られる場合を含みます。)にその財産又は債務に関して所得税の申告漏れが生
じたときは、過小申告加算税等が5%加重されるというペナルティが設けられ
た厳しい制度となっています。
 所得基準に加えて資産基準が追加されたことで対象者は限定されているわけ
ですが、企業や医療法人の経営者の方々は、所得2,000万円かつ有価証券
1億円の基準に到達してしまう方が大勢いらっしゃいます。要件を満たしてし
まうと、所有している財産すべてについて、その時価や取得価額などを項目に
応じて事細かに記載する必要があり、作成には時間と労力を要します。会計事
務所側も、所有する財産について根掘り葉掘りお聞きするのは心苦しく思い
つつ、制度の内容やペナルティについてお話させていただきながらなんとか適
正記載に努めているところです。
 制度の適用開始から3年経過した昨年あたりから、財産債務調書の記載内容
について所得税の税務調査の現場で話題にされるようになっています。当事務
所ではまだペナルティになった例はありませんが、記載不足について指摘され
ることがあり適正記載の困難さを実感しています。
 このようにマイナスの印象が多い財産債務調書ですが、どちらにしても作成
しなければならないなら年に1度の自分の財産の棚卸ととらえ、これを使って
相続や贈与のことを考える機会としてみてはいかがでしょうか。
 財産債務調書制度の詳細は、国税庁HPをご参照ください。↓
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_chirashi.pdf

                                                     
▲ページトップへ戻る

#53 贈与税の住宅取得等資金の特例を受けた場合の注意点

 マイホームを建てたり購入する場合、親から必要な資金を贈与してもらうこ
とがあるかと思います。その場合、一定金額までは贈与税が非課税となる「贈
与税の住宅取得等資金の特例」という制度があります。

 贈与税の住宅取得等資金の特例とは、平成27年1月1日から平成33年12月31日
までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に
供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得
した場合において、受贈者の年齢が20歳以上であること、所得が2,000万円以
下であることなどの要件を満たすときは、一定の金額まで贈与税が非課税とな
る制度です。

 ※住宅取得等資金の贈与特例の詳細については、国税庁HPをご参照下さい。
  https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm

 また住宅ローンを組んで所得税の住宅ローン控除を適用し、一部資金を親か
ら贈与を受け贈与税の住宅取得等資金の特例を適用する方も少なくありませ
んが、計算や要件に注意を払う必要があります。

 昨年12月に国税庁は、会計検査院より所得税の住宅ローン控除と贈与税の住
宅取得等資金の特例のいずれも申告している場合等に関して、納税者の申告誤
りが多く見受けられるとの指摘を受けたことを明らかにしています。

 国税庁において再度申告書の見直しを行った結果、平成25年分から平成28年
分までの所得税の確定申告書を提出した納税者のうち最大で約1万4,500人につ
いて申告誤りの是正が必要であることが判明しています。

 以下、贈与税の住宅取得等資金の特例を受けた場合の申告誤りとなってい
るケースです。
 ・新築や購入等した家屋を居住の用に供した年分又はその前年分において
  その家屋の取得に当たり贈与を受け、贈与税の住宅取得等資金の特例を受
  けた場合で、更に、住宅ローン控除の適用を受けるときは、住宅ローン控
  除額の計算上、贈与の特例を受けた受贈額を家屋の取得価額等から差し引
  く必要があるが、誤ってその減算をしていなかった。

 ・直系尊属から住宅取得資金等資金の贈与を受けた場合の贈与税の住宅取得
  等資金の特例を受けた場合については、その適用を受ける受贈者の所得税
  の合計所得金額が2,000万円超である納税者は、その適用を受けることが
  できないにもかかわらず誤って適用を受けていた。

                                                     
▲ページトップへ戻る

#52 個人版事業承継税制

 平成30年12月14日に、平成31年度の税制改正大綱が発表されました。今回は
その中でも、個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度についてご紹介します。
 平成30年度に創設された法人版事業承継税制と同じような制度設計となってお
り、事業承継をしやすくするため、個人事業者の特定事業用資産について、相続
税・贈与税の納税が猶予される制度です。
 法人版事業承継税制は、特例措置期間10年限定で導入されていますが、個人版
事業承継税制も10年間の時限措置とされています。

 具体的には贈与税の場合、経営承継円滑化法の規定により認定を受けた受贈者
(後継者)が、平成31年1月1日から平成40年(2028年)12月31日までの間に
贈与により特定事業用資産を取得し、事業を継続する場合は担保提供を条件に
特定事業用資産に係る贈与税が納税猶予されます。
 ただし、事業のうち不動産賃貸業は除外されています。つまり、アパート・
マンションの賃貸経営を行っている個人事業者は、適用対象とはならないという
ことです。この点、アパート・マンションの賃貸経営であっても親族外従業員を
5人以上雇用し、3年以上継続して事業を行っていると適用することができる法人
版事業承継税制とは適用範囲が異なっています。
 また、受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人以外の者であっても、その
贈与者がその年1月1日において60歳以上である場合には、相続時精算課税の適
用を受けることができます。

 特定事業用資産とは、不動産貸付事業等を除く贈与者の事業の用に供されてい
た面積400平方メートルまでの土地、床面積800平方メートルまでの建物および
建物以外の減価償却資産で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されている
ものをいいます。
 相続税の納税猶予も同様の内容ですが、相続税の納税猶予の適用を受ける場合
には特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例は適用できません。

 上記については、平成31年1月1日以降の相続または贈与により取得する財産に
ついて適用されます。また、承継計画を平成31年4月1日から平成36年(2024年)
3月31日までの間に都道府県に提出する必要があります。
                                                     
▲ページトップへ戻る

#51 改正相続法(民法)の適用関係

 前回のメールマガシンでは、改正相続法(民法)のうち身近な預貯金債権の
仮払制度について取り上げました。この改正法は、原則として、平成31年(20
19年)7月1日以後の相続に適用されることになりますが、配偶者居住権は平成
32年(2020年)4月1日以後の相続に適用されます。そこで、今回は各制度の
適用関係を確認していきます。

  1. 配偶者の居住権を保護するための方策について 
    配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象に、終身
    又は一定期間配偶者にその使用又は収益を認めることを内容とする法定
    の権利を新設する(配偶者居住権等)。32年4月1日以後の相続・遺贈に
    適用。
  
  2. 遺産分割に関する見直し等 
   (1)婚姻期間が20年以上の夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者にその居
      住用建物等を遺贈又は贈与した場合、遺産分割においては、原則と
      して当該居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算できる
      (持戻し免除の意思表示の推定規定)。31年7月1日以後の遺贈又は
      贈与に適用。
   (2)遺産に属する預貯金債権のうち、口座ごとに一定の計算式で求め
      られる額までは他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しを
      することができる等(仮払制度等の創設・要件明確化)。31年7月1
      日以後の遺贈又は贈与に適用。
    <詳細は、メールマガシン第82号>
  3. 遺言制度に関する見直し 
    自筆証書遺言に添付する財産目録について、自署でなくてもよいものと
    する(自筆証言遺言の方式緩和)。31年1月13日以後の自筆証書遺言に
    適用※

  4. 遺留分制度に関する見直し
    (1)遺留分に関する権利の行使によって、遺留分侵害額に相当する金
       銭債権が生ずることにする(遺留分減殺請求権の金銭債権化)。
       31年7月1日以後の相続に適用。
    (2)遺留分や遺留分侵害額を求める計算式を明文化。また、相続人へ
       の贈与について相続開始前の10年間にされたものに限り、遺留分
       算定のための財産の価額に算入する(遺留分の算定方法の見直
       し)。31年7月1日以後の相続に適用。

  5. 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
    相続人以外の被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護等を行った
    場合に、一定要件の下、相続人に対して金銭請求ができるようにする。
    31年7月1日以後の相続に適用。
  「出典:税務通信No3533号」
  
  ※平成31年(2019年)1月13日から、日本の超高齢化の進展に対して、遺言
   の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止するといった観点から、自筆証
   書遺言の方式が緩和されるようになります。この13日という中途半端な施
   行日は、遺言書保管法が平成30年7月13日に公布されたためと考えられ
   ます。
   これまで自筆証書遺言は、添付する財産目録も含めて、全文を自分で書く
   必要があり一字一句間違わぬように記載することが求められていましたが
   遺言者の負担を軽減するため、遺言書に添付する相続財産目録については
   パソコンで作成したものや、不動産の登記事項証明書、預貯金通帳や残高
   証明書のコピーなどでもよくなることとなります。

                                                     
▲ページトップへ戻る

#50 預貯金債権の仮払い制度

 今年7月に相続に関する民法の規定が40年ぶりに見直されることが決まり
来年1月以降順次施行されていくこととなりました。
 配偶者居住権の創設や遺言制度・遺留分制度に関する見直しなど様々な改正が
ありますが、今回は身近な預貯金債権の仮払い制度について取り上げたいと思い
ます。
 被相続人(亡くなった人)名義の預金は凍結されてしまい、引き出すことがで
きなくなるのは有名な話です。これは、平成28年12月19日最高裁大法廷判決
で、預貯金債権は可分債権であるとする従来の判例が変更され、預貯金債権が遺
産分割の対象財産に含まれるという判断が示されたため、共同相続人による単独
での払戻しができなくなったことによります。
 この決定により、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要が
ある場合でも共同相続人の同意を得られなければ被相続人の預金の払戻しができ
ないという問題が指摘されていました。改正前の民法でも、家庭裁判所に申し立
てをして一定額を引き出すことは可能でしたが、厳格な要件があり引き出すまで
の時間もかかりました。
 今回の改正ではこの問題に対応するため、次の2つの仮払い制度が設けられま
した。
(1)預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和する。
(2)預貯金債権の一定割合(金額による上限あり)については、家庭裁判所の
   判断を経なくても金融機関の窓口における支払いを受けられるように
   する。
‘  (1)の方法では家庭裁判所への申立てが必要ですが、(2)の方法では、
   家庭裁判所への申立ての必要はなく、以下の計算式で求められる額まで
   共同相続人が単独で払い戻すことができます。
【計算式】
   単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)
  ×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)
  なお、この払戻し金額は「預金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を
  限度とする」と定められています(改正民法第909条の2)。この上限額は
  当初100万円と予想されていましたが、平成30年9月28日付で公表された
  改正民法に関する法務省令案では150万円とされています。(意見・情報受
  付締切日は10月27日)

 上記のパブコメを経て、今後具体的な申請の方法などが示されていくこととな
ります。
 相続人が単独で一定の金額を引き出すことができるようになったことで当面の
資金問題は解決されそうですが、その後の遺産分割を円滑に進めるためには、こ
の制度を使うことにつき他の相続人に通知しておく、引き出した預金の使途を明
確にしておくなどの対策も必要であると思われます。


                                                     
▲ページトップへ戻る

#49 相続税の連帯納付義務とは

 相続税は、原則として相続または遺贈により財産を取得した者がそれぞれ納付

義務を負っています。しかし、相続税債権確保等の理由から、同一の被相続人か

ら相続または遺贈により財産を取得したすべての者は、各人がその相続または遺

贈によりうけた利益の額を限度として、相互に連帯して相続税を納付しなければ

ならないこととされています。

 これを「連帯納付義務」といいます。

 

 このため、仮に相続人が自分と先妻の子の2人であった場合で、もし先妻の子

が相続税を納付できなくなった場合、他の相続人(自分)は連帯納付義務者とし

て、その納付できなくなった相続税の納付を求められる場合があります。

 

 連帯納付義務については、他の相続人の納付義務の履行状態がわからない中、

自分の納税義務は果たしているにも関わらず、突然他の相続人分の納付を求めら

れる場合があることや、連帯納付義務者が連帯納付義務を履行する時点では長期

間が経過しており、すでに多額の延滞税が加わっている場合があることなどの問

題点が指摘されていました。

 

 これらの問題点について、税制改正により、連帯納付義務者が連帯納付義務を

履行する場合に納付する延滞税を利子税に代える措置が講じられるとともに、連

帯納付義務者に対して連帯納付義務の履行を求める場合の手続規定が整備されま

した。さらに、連帯納付義務の履行の範囲についても見直しが行われ、納税義務

者が延納の許可をうけた場合等、一定の場合には連帯納付義務が解除されること

となりました。

 

 次の場合には相続税の連帯納付義務が解除されることとなります。

. 申告期限から5年を経過した場合

    ただし、期限後申告、修正申告、更正、決定があった場合にはこれらが

    あった日から5年とされます。また、申告期限等から5年を経過した

    時点で連帯納付義務の履行を求められているものについては、その後も

    継続して履行を求めることができるとされています。

. 納税義務者が延納の許可をうけた場合

. 納税義務者が、自社株式や農地等の納税猶予制度の適用をうけた場合

 

(注)2.3の場合で連帯納付義務が解除となるのは、延納の許可をうけた、

   または納税猶予の適用をうけた税額のみであり、その他の税額が

   ある場合には引き続き連帯納付義務の対象となります。ただし、この

   場合であっても上記1のとおり申告期限から5年を経過する日までに

   連帯納付義務の履行を求める納付通知書が送付されなかった場合には、

   連帯納付義務を負うことはありません。
                                           
▲ページトップへ戻る

#48 相続人に非居住者がいる場合の申告手続

 国際化が進み、相続人の中には海外へ赴任されたり移住されたりと非居住者に

なるケースが多く見られるようになりました。

 

 相続が発生して相続税の申告や相続財産の名義変更をする場合、さまざまな書

類を添付する必要があります。相続人が誰なのかを確認するために戸籍謄本を添

付(※)したり、遺言書がない場合には、遺産分割協議書の写しとその協議書に

押印した印鑑証明書の添付が必要となります。また多くの手続きにおいて、相続

人の住民票添付も必要となります。

 そうした場面で相続人が非居住者の場合、通常の相続手続きと異なる部分が生

じるため注意が必要です。

 

◆サイン証明書(署名証明書)

 基本的に印鑑証明書は、日本に住民登録をしていないと発行してもらうことは

できません。したがって遺産分割協議書などの実印が必要となる書類にはサイン

を行い、印鑑証明書に代わるものとしてサイン証明書を取得します。

 サイン証明書は、各国の日本国大使館や日本国領事館で発行を受けることがで

きます。申請においてはそれぞれの大使館や領事館で本人が署名等を行う必要が

あるため、必ず本人が出向く必要があります。

 

◆在留証明書

 海外で相続人が居住している場合は、日本の住民票に代わるものとして、在留

証明書を発行する手続きが必要となります。在留証明書は、各国の日本国大使館

や日本国領事館で発行されます。

 在留証明書の発行には、日本国籍を有していること及び本人確認ができる書

類、住所が確認できる文書、滞在開始時期が確認できる書類などが必要となりま

す。

 

 なお、手続きは国によって異なるため、事前にホームページ等で確認を行って

下さい。

 

 これらの書類を取得するためには、多くの時間を費やすことになります。広大

な国では大使館や領事館までの道のりが遠かったり、日本人の時間感覚とは違う

ため待ち時間が何時間にも及んだりすることもあります。

また書類のやり取りをする場合、国によっては郵便物が無事に到着しない場合も

あるため、非居住者の方が一時帰国をする際に書類の受け渡しをしなければなら

ない状況も考えられます。

 相続人が海外に居住している場合は、早めにスケジュールを立てて手続きを円

滑に進める必要があります。

 

(※)平成30年度税制改正により、これまで相続税の申告書には1の書類を添付

しなければならないこととされていましたが、平成3041日以後に提出する申

告書から、1の書類に代えて、2又は3のいずれかの書類を添付することができ

るようになりました。

   1.「戸籍の謄本」で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの

   2.図形式「法定相続情報一覧図の写し」(子の続柄が、実子又は養子の

     いずれであるか分かるように記載されたものに限ります。)

   3.1又は2をコピー機で複写したもの
                                           
▲ページトップへ戻る

#47 災害を受けた場合の相続税・贈与税の取扱い

 83日に配信しましたメールマガジンで「災害と所得税の軽減措置」について

触れましたが、今回の相続税コラムでは、相続税・贈与税における災害に関する

措置についてご紹介します。

 

1)特定非常災害に関する特例(平成29年度税制改正により創設)

  相続税・贈与税では、特定非常災害の発生前に相続等により取得した土地等

 または株式等でその特定非常災害発生日において所有していたものについて

 は、通常の財産評価ではなく、特定非常災害の発生直後の価額として政令で定

 める方法により評価することとしています。つまり、災害による損害を考慮し

 て評価した価額となります。

  また、これに関連して、「特定非常災害発生日以後に相続等により取得した

 財産の評価について」(法令解釈通達)が定められました。

 

(注)「特定非常災害」とは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図る

  ための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として

      指定された非常災害をいいます。これまでに指定された災害としては、「阪

  神・淡路大震災」、「平成16年新潟中越地震」、「東日本大震災」、「平成

  28年熊本地震」の4件です。

 

 

2)災害減免法による減免

  相続等により取得した財産について、災害により被害を受けた場合におい

 て、次の(イ)又は(ロ)のいずれかに該当するときには、相続税額の減免を

 受けることができます。

 

 (イ)相続税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額(債務控除後の価

   額)のうちに、被害を受けた部分の価額(保険金等により補てんされた金

   額を除きます。)の占める割合が10分の1以上であること。

 

 (ロ)相続税の課税価格の計算の基礎となった動産等の価額のうちに、動産等

   について被害を受けた部分の価額(保険金、損害賠償金等により補てんさ

   れた金額を除きます。)の占める割合が10分の1以上であること。

  ()動産等とは、動産(金銭及び有価証券を除きます。)、不動産(土地

   及び土地の上に存する権利を除きます。)及び立木をいいます。

 

 また、災害による被害が申告期限前と申告期限後で取り扱いが異なります。

 

(法定申告期限前に災害があった場合)

  相続税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額から、被害を受けた財産

 部分の価額を控除した価額により相続税額を計算します。

 

(法定申告期限後に災害があった場合)

  災害のあった日以後に納付すべき相続税額について、次の計算式により計算

 した相続税額が免除されます。

  

    災害があった日以後に納付すべき相続税額 × 被害を受けた部分の価額

    ÷ 課税価格の計算の基礎となった財産の価額(債務控除後の金額)

    = 免除される相続税額

 

 なお、免除を受けるためには、災害のやんだ日から2か月以内に、被害の状況や

被害額等を記載した申請書を、納税地の所轄税務署長に提出しなければなりませ

ん。
                                           
▲ページトップへ戻る

#46 贈与と資産運用

 生前贈与をする目的は人様々あると思います。相続対策を目的として特定の人

に財産を譲りたい、子供や孫への援助をしたい等々。早めに子や孫に財産を譲

り、彼らの資産形成に役立てるための資産運用を目的とされる方も多数いらっ

しゃるのではないでしょうか。

 資産運用というと株式、外貨、不動産への投資がメジャーです。今回はそれぞ

れを贈与した場合の贈与税の課税対象となる評価額などについてご紹介します。

 

<株式>

 上場株式は、課税時期(贈与により財産を取得した日)の終値、その月の平均

額、前月の平均額、前々月の平均額のうちいずれか低い価額により評価します。

しかし、保有株式を贈与するのではなくこれから株式投資するという場合は、

ジュニアNISAの活用が有効ではないかと思います。

 

-ジュニアNISAとは-

 019歳の未成年者のNISA口座です。両親や祖父母などが運用管理者とな

り、株式投資信託や上場株式への投資から得られる配当金や譲渡益などの収益が

非課税となります。子供が18歳になるまでは払出し制限がかけられています。

 拠出額は一人当たり年間80万円が限度となりますので、贈与税の非課税枠110

万円に収まります。そのためジュニアNISAのみの贈与であれば贈与税は課税

されません。

 

参照:金融庁HP https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/junior/overview/index.html

 

<外貨>

 外貨を贈与する場合は、円に換算して評価します。換算レートにはTTS(対

顧客直物電信売相場)、TTM(電信売買相場の仲値)、TTB(対顧客直物電

信買相場)がありますが、この場合の換算レートはTTBにより行うこととされ

ています。贈与後、円に交換した場合は、為替差益について雑所得の確定申告が

必要となります。

 

<不動産>

 土地については、路線価が定められている地域は路線価で、そうでない地域は

その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算した価額で評価します。

家屋については固定資産税評価額に1.0倍して評価します。賃貸されている土地や

家屋については、権利関係に応じて評価減がされます。

 賃貸不動産を贈与した場合、その後の不動産所得については受贈者の所得にな

りますので、受贈者において税務署へ届出(開業届、青色申告承認手続)をしま

す。不動産を贈与する場合、所有権が移転するため登記費用、不動産取得税など

贈与税以外の出費がありますので、それらも含めてもメリットがあるのかどうか

をよく検討する必要があります。
                                           
▲ページトップへ戻る

#45 遺言代用信託の活用

 ここ最近よく「信託」という言葉を耳にします。信託には様々な種類がありま

すが、相続においても信託のスキームを活用するケースも増えています。そこで

今回は「遺言代用信託」仕組みや「遺言信託」との違いなどを少し整理していき

ます。

 

 相続が開始されると、多くの相続人の方々が被相続人の口座からお金が引き出

せないと懸念されています。これは、相続財産を確定させるため、相続開始以降

遺産分割協議が完了するまで銀行口座は凍結され、その間は預金を引き出すこと

ができなくなるからです。遺産分割協議がスムーズに進まないと、葬儀費用や被

相続人に扶養されていた配偶者などは生活費を引き出すことも難しくなります。

しかし、このようなケースに対応できるのが「遺言代用信託」です。

 

◆遺言代用信託とは

 

 そもそも信託とは、財産管理・承継方法のひとつであり、委託者が自身の財産

を契約によって信頼できる相手(受託者)に移転し、受託者は契約において指定

した人(受益者)のために、その目的に沿って財産を管理・処分する仕組みで

す。

 遺言代用信託は、被相続人が委託者兼第一受益者となり、信託銀行などを受託

者、配偶者など相続人を第二受益者と指定し、信託銀行などに預金を信託財産と

して移転することで、委託者の死後、配偶者などが銀行口座のお金を引き出せる

ようにできる信託です。

 ここで大きな特徴となるのが、信託財産は、遺産分割協議の対象外となること

です。つまりこの仕組みを使えば、遺産分割協議を待たずとも、受益者に指定さ

れた相続人が、所定の手続きで被相続人の預金を引き出すことが可能となるので

す。

 

◆遺言代用信託と遺言信託とは違います

 

 遺言信託は、信託銀行などが提供している商品です。主なサービスとして、被

相続人が有効な遺言書を作成するために事前に相談にのることや作成した遺言書

を保管するといった遺言書作成支援・保管業務、また、遺言執行者として遺言内

容の実現のため必要な手続きをし財産を分配するといった遺言執行業務などがあ

ります。遺言信託も信託銀行などと契約を締結しますが、契約内容はあくまで業

務に関する事務的なサービスです。また、遺言代用信託とは違い信託銀行などへ

の信託金の移転もありません。

 

◇ 遺言代用信託活用の留意点

1. 信託財産は現金のみであり不動産や株式などの有価証券は含むことはできません。

2. 遺産分割協議の対象外といえども、遺留分を侵すことはできません。

3. 申込手数料、信託期間中の信託報酬などのコストがかかります。

4. 原則、中途解約することはできません。

 

 相続開始後に被相続人の口座からお金が引き出せないと懸念されているのであ

れば、遺言代用信託のメリットやデメリットを十分考慮し活用するのもひとつの

方法です。
                                           
▲ページトップへ戻る

#44 民法改正と税金

 「法律の改正があって、自宅を妻に贈与しても税金がかからなくなったという

のは本当ですか?」少し前にこのような質問を受けました。

 現在衆議院にて審議中の改正民法の中に盛り込まれている遺産分割に関する改

正と税金の話が一緒になってしまい混乱しているので、少し整理してお答えしま

した。

 

(1)遺産分割に関する改正

 まず改正民法の中の遺産分割に関する改正とは、婚姻期間が20年以上の夫婦

間で配偶者に居住用の不動産を遺贈または生前贈与をしたときは、持戻し免除の

意思表示があったものと推定し、遺産分割の対象としないものとするという改正

です(改正民法903条4項)。

 現行民法では、「自宅は配偶者に相続させる」という遺言があるときや配偶者

に自宅の生前贈与をしている場合でも、特別受益者の相続分(民法903条)の規

定により、その財産(自宅)を相続開始の時に相続人が有する財産に持戻して合

算したうえで、各相続人の相続分を算定することになります。

 このため、財産が自宅とわずかな預貯金のみというケースで配偶者以外の相続

人が法定相続分の財産の相続を希望する場合は、自宅を売却して金銭で分配する

場合もあり、残された配偶者が住み慣れた自宅を追われる恐れがあります。また、

配偶者が自宅を相続できたとしても、自宅の評価額が高ければ高いほど他の

財産を受け取る余地が少なくなり、生活資金に困るなど不安な状態に陥ることも

考えられます。

 改正後は、遺贈または生前贈与された自宅は遺産分割の対象から外されること

となりますので、配偶者は自宅に住み続けることができ、他の財産を取得できる

可能性も広がるので配偶者の老後の生活保障が厚くなります。

 

(2)配偶者の居住権

 このほか今回の民法改正では、配偶者の居住権の創設も注目されています。

これは、配偶者が被相続人の財産である建物に相続発生時(被相続人が亡くなっ

たとき)に居住していた場合において、

1.遺産分割によって配偶者居住権を取得したとき

2.配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

は、配偶者が終身または一定期間住み続けることができる権利です。

(改正民法1028条1項)

 配偶者が配偶者居住権を取得した場合には、その財産価値に相当する価額を相

続したことになりますが、自宅の所有権よりは評価額が低くなると考えられるこ

とから、生活費に充てる預貯金などを相続する余地が増えます。

 以上のように、高齢化や家族関係が時代とともに変化していく中、残された配

偶者の老後の住まいや生活費を確保しやすくするための民法改正が行われる予定

です。

 

(3)贈与税の配偶者控除

 一方、税金についてですが、配偶者に対する贈与には「贈与税の配偶者控除」

があり、夫婦間で居住用不動産またはその購入資金の贈与があったとき、婚姻期

間20年以上などの一定の要件を満たせば、2,000万円までは贈与税を非課

税とする制度があります。相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産

がある場合、通常の贈与では、その財産も相続税の計算の際、課税価格に加算す

る必要がありますが、この特例の適用を受けて被相続人から贈与された居住用財

産については、その必要はありません。この特例の改正は今のところありません

ので、基礎控除の110万円と2,000万円の合計額を超える自宅を贈与した

場合は課税されることとなります。

 税金の問題については、改正民法成立後の財産評価基本通達の改正で、相続税

の計算の際、居住権や居住権付き不動産をどう評価することになるのか等、今後

も注目されるところです。

 

 なお、配偶者居住権は婚姻期間にかかわらず適用されるようですが、遺言がな

い場合は遺産分割協議によることになるので、必ず適用できる保証はありません。

また、遺言がある場合はそちらが優先されることになりますが、家族の事情

によってはこの事が家族間の新たな問題となる場合もあるので、これまで以上に

慎重な生前対策が重要になってくると思われます。
                                           
▲ページトップへ戻る

#43 相続を放棄した者が受け取った生命保険金には相続税はかかるか

生命保険金は、保険契約に基づき受取人が原始的に取得するものであり、受取人の固有の財産とされています。

たとえ相続を放棄した者であっても、生命保険金は受け取ることができます。

「相続放棄」とは、被相続人が残した財産について、相続する権利を放棄するということであり、もともと受取人の財産である生命保険金を取得する権利を放棄するということではありません。

相続税法上は、生命保険金も人の死亡という事実に基づき取得されるものであり、その実態は相続・遺贈によって取得したものと異ならないため、相続財産とみなし、相続税を課することとしています。そして、相続を放棄した者は、当然相続人としての取扱いは適用されないため、遺贈によりその生命保険金を取得したものとみなされ、相続税の課税対象となりますが、相続を放棄した者については、生命保険金の非課税規定は適用されません。

 

相続を放棄した者の相続税額の計算にあたっては、以下の点にご注意ください。

 

  1. 相続を放棄した者については、債務控除の適用はありませんが、その者が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合には、その負担額は、その者の遺贈によって取得した財産の価額から控除することができます。

     

  2. 遺産にかかる基礎控除額、相続税の総額および生命保険金の非課税限度額を計算する上では、相続を放棄したときでも、それとは無関係に、もとの法定相続人の数によって算出します。

     

  3. 相続を放棄した者が、遺贈により財産を取得した場合において、その者がその遺贈にかかる被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含みます。)および配偶者であるときは、相続税額の2割加算の規定の適用はありません。

     

  4. 贈与税額控除、配偶者に対する相続税額の軽減等の税額控除の規定は、相続を放棄した場合でも適用が受けられますが、相次相続控除制度のみは相続人に限定されていますので、適用されません。 
                                                       
    ▲ページトップへ戻る

#42 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合

  親や祖父母から生前贈与を行った場合の特例制度はいくつかありますが、その中の一つに平成27年度税制改正により創設された「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税」制度があります。

 

我が国においては、家計金融資産の6 割を高齢層が有しており、その資産を早期に若年層に移転することにより経済の活性化につなげるとともに、将来の経済的不安により若年層の結婚・出産を躊躇させることが少子化の大きな要因の一つとなっていることを踏まえ、新たに設けられた制度です。

 

◆制度の概要

この制度は、平成2741日から平成31331日までの間に、20歳以上50歳未満の者(受贈者)が結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、父母や祖父母などの直系尊属(贈与者)から信託受益権を付与された場合や金銭等の贈与を受けて銀行等に預け入れをした場合などには、受贈者ごとにそれらの信託受益権や金銭等の価額のうち、1,000万円までが非課税となります。

 

◆結婚・子育て資金

1.結婚に際して支払う金銭(300万円を限度)

・挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用

・家賃・敷金等の新居費用、転居費用

2.妊娠、出産及び育児に要する金銭

・不妊治療(薬局に支払われるものも含む)・妊婦健診に要する費用

・分べん費等・産後ケアに要する費用

・子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)

 

◆贈与者が死亡した場合

ここで注意が必要なのは、契約期間中、贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税とされた金額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額を贈与者から相続等により取得したこととされ、相続財産に加算されます。

これは、教育資金の一括贈与非課税制度(相続コラム115日号で解説)との大きな違いです。教育資金非課税制度では、贈与者が死亡した場合でも残額を相続財産に加算されません。

 

◆契約が終了した場合

 その後、受贈者が50歳に達することなどにより、結婚・子育て口座に係る契約が終了した場合には、非課税とされた金額から結婚・子育て資金として支出した金額を控除した残額がある場合には、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。

 

◆適用の手続き

 この制度の適用を受けるためには、その契約の際に結婚・子育て資金非課税申告書を金融機関を通じて税務署へ提出しなければなりません。また、金融機関等からの金銭等の払出し及び結婚・子育て資金の支払を行った場合には、結婚・子育て資金の支払に充てた領収書などを一定の期限までに金融機関等へ提出する必要があります。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 


#41 贈与税の配偶者控除と生前贈与加算

 平成298月のコラムで贈与税の配偶者控除をお伝えしましたが、今回はこの特例を適用した場合に、相続税において生前贈与加算の規定が適用されるかについてお伝えします。

 まず、贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の配偶者から居住用不動産(居住用不動産を取得するための金銭を含みます。)を贈与により取得した場合、その居住用不動産に住み続けることを要件に、贈与税の課税価格から最大2,000万円を控除できるという制度です。

 そして、相続税における生前贈与加算とは、相続または遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得した場合には、その贈与により取得した財産を相続税の課税価格に加算して相続税を計算するという制度です。

 この加算される財産には、贈与税の配偶者控除の適用を受けた部分(これを特定贈与財産といいます。)は含まれません。ただし、贈与税の配偶者控除の限度額である2,000万円を超える部分については、生前贈与加算の対象となります。また、贈与した年に相続が発生した場合であっても、生前贈与加算はされません。この場合には、相続税の申告書に一定事項の記載が必要になり、贈与税の申告も必要になります。

このように配偶者に対する生前贈与については、手厚い優遇税制が整備されています。ただ、配偶者へ贈与しても、その配偶者に相続が発生した場合には相続財産とされますが、生前贈与対策として十分な効果を有することも事実です。

例えば、居住用不動産の名義が夫のみであった場合に、一部を妻に贈与して夫婦の共有財産とした後に、介護が必要な状態になって自宅での生活が難しくなり、夫婦で有料老人ホームに入所することを決めたとします。入所の資金を作るために住んでいた自宅を売却するとき、夫のみの名義であれば所得税における居住用財産の譲渡所得の3000万円の特別控除は夫のみしか使えません。しかし、共有名義にすることで夫婦2人分の適用が可能となり、夫婦それぞれで3,000万円の特別控除が使えます。つまり、2人で6,000万円までの控除を受けることが可能となります。

ただし、家屋は共有でなく、敷地だけを共有としている場合には家屋の所有者以外の者は原則としてこの特例を受けることはできませんのでご注意ください。

 

なお、配偶者控除の適用を受けた部分は、贈与税は非課税となり、生前贈与加算の対象とはなりませんが、不動産取得税や登記費用等の費用がかかりますので、注意が必要となります。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#40 教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

 平成2541日からスタートしたこの制度も平成311231日までと期限が迫ってまいりました。この間金融機関から相続対策として勧められた方もいらっしゃると思いますが、あらためてご紹介します。

 

≪制度概要≫

30歳未満の直系の子孫に1,500万円(塾、習い事など学校等の教育機関以外の支払いは500万円)まで教育のための資金を非課税で贈与できるものです。受贈者が30歳に達したときに教育資金として使い切っていなければ残額に贈与税が課されます。受贈者が亡くなった場合には相続財産に加算されません。

 

≪教育資金とは≫

1)学校等に対して直接支払われるもの

入学金、授業料、学用品購入費、修学旅行、給食費、入学試験検定料など

2)学校等以外に対して支払われるもの

習い事の授業料、必要な物品購入、通学定期代、留学渡航費、入学、転入学に伴う転居費用など

 

≪適用を受けるための手続≫

教育資金口座の開設を行い、預金の預け入れ等をする日までに口座開設を行った金融機関を経由して税務署に教育資金非課税申告書を提出します。金融機関が行うので、税務署で個人が行う手続きはありません。

 

≪資金払い出しの手続き≫

教育資金口座の開設時に選択した払出方法により、以下の期限までに金融機関に領収書を提出する必要があります。

1)教育資金を支払った後に払い出す方法を選択した場合

領収書に記載された支払年月日から1年以内

2(1)以外の払出す方法を選択した場合

領収書に記載された支払年月日の属する年の翌年315

 

使い道は教育資金に限定され、領収書の提出など手続きにひと手間かかる制度です。平成2910月号のメールマガジンでお伝えした通り、これまでもその都度受ける教育資金については贈与税のかからない財産でした。この制度を適用すると先行して一括で多額の贈与を受けられ、通常の贈与と違い、相続発生前3年内贈与の相続財産への加算も必要ありません。暦年贈与の110万円非課税と併用して受けることもできます。

したがって、場合によっては手間を上回るメリットがあるかもしれません。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#39 平成30年度税制改正~一般社団法人を使った相続税課税逃れ 対策強化へ

 不動産などの資産に相続税がかからない一般社団法人を使った課税逃れを防ぐため、来年度の税制改正で、役員の過半数を親族が占める法人の財産にはすべて相続税を課す改正が行われることとなります。相続税は土地や建物などの財産を相続した場合に課税されますが、現行の制度では一般社団法人に移した資産には相続税がかからない仕組みになっています。

 

平成20年の公益法人制度改革により、一般社団法人が登記のみで設立できることとなったため、一般社団法人等は、平成29年度時点で約51千法人まで増加しています。そのうち非営利型は約27千法人、非営利以外のその他は約24千法人となっています。

非営利型の一般社団法人等は、残余財産の分配ができなく、収益事業以外は法人税が非課税とされています。また、理事のうち親族割合が3分の1以下であることが要件とされています。これに対して非営利型以外のその他の一般社団法人等は、残余財産の分配が可能で、事業内容に制限がなく、株式会社と同様に法人税が課税され、また、理事のうち親族割合に関する制限は設けられていません。

 

このように一般社団法人が登記するだけで容易に設立できることとなったため、親が一般社団法人を設立して資産を移し、子や孫に法人の役員を継がせる方法で相続税を免れようとするケースが目立ってきているとのことです。

このため、政府・与党は来年度の税制改正で、一般社団法人を使った課税逃れの対策を強化する方針を固めました。具体的には法人の役員の過半数を親族が占めている場合には、法人の財産をすべて相続税の課税対象にするとしています。

 この措置によって非営利以外のその他の約24千法人が見直しの対象となり、相続税が課税される法人は数千に上ると見られています。政府・与党は来年度の税制改正に盛り込み、早期の実施を目指す方針とのことです。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#38 負担付贈与をした場合の課税はどうなるのか

  税務上の負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいい、贈与された財産の価額から負担額を控除した価額に相当する財産の贈与があったものとして贈与税が課税されることになっています。

例えば、

父が「自分の介護をすること」と「銀行借入金の残り(2,000万円)を引き継ぐ」という条件で、私に土地(時価5,000万円、相続税評価額3,500万円、取得価額3,000万円)を贈与してくれると言っています。

このような贈与が負担付贈与です。このケースの場合は、銀行借入金という債務を負うことが負担となり、贈与された財産の価額から控除して贈与税を計算します。なお、「介護をすること」という負担は、評価して金額を確定することができないので、税金を計算する場合において引くことはできません。

贈与された財産の価額は、その財産が土地や借地権などである場合及び家屋や構築物などである場合には、贈与の時における通常の取引価額に相当する金額(時価)によることになっていますので、上記のケースでは、贈与された財産である土地の時価5,000万円から借入金2,000万円を控除した残額に対し贈与税が課税されることになります。

かつては、財産の評価額として相続税評価額(上記のケースでは3,500万円)を使うことができたため、時価と相続税評価額の差を利用した相続税対策として負担付贈与が利用されていたようですが現在そのメリットはなくなっています。

 負担付贈与をした場合は、贈与者にも税負担が生じる可能性があるので注意が必要です。負担付贈与をすると、その負担相当額をもって資産を有償譲渡したものとされます。上記のケースでは、返済しなくてよくなった借入金2,000万円を譲渡収入として土地(3,000万円)を譲渡したことになります。このケースでは税金はかかりませんが、借入金が多く残っていて取得費を上回るような場合は譲渡所得税等が課税されることになります。

 このほか、税金計算上は考慮されない負担(上記のケースでは「介護すること」という義務)の存在や銀行借入金を引き継ぐ場合には当事者間の合意以外に銀行の同意が必要となる点、登記費用や不動産取得税の面でも負担付贈与の方が相続より不利になる点にも注意が必要です。

 以上のように負担付贈与は、相続税対策としての効果が少なくなり、デメリットも目立ちますが、相続が発生する前に財産の利用を開始できることや、生前に財産の所有者を確定しておけるというメリットもあります。負担付贈与を利用する場合は、これらのメリットデメリットを十分理解した上で行う必要があります。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#37 贈与税のかからない財産とは

 個人間で贈与があった場合、また贈与と同様の経済効果があった場合には、贈与税が課されます。しかし、贈与された財産の性質、社会生活および政策上の配慮などから、贈与税がかからないものがあります。

 

<扶養義務者からもらった生活費や教育費のための財産>

扶養義務のある人から生活費や教育費をもらった場合、それが通常必要と認められるもので、必要な都度、直接これらに充てるためのものであれば、贈与税はかかりません。

ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。

したがって、生活費や教育費などの名目でもらっても、それを預金したり、株式や不動産の購入に充てている場合には、贈与税がかかります。

なお、「扶養義務者」とは、配偶者、直系血族、兄弟姉妹、家裁の審判で扶養義務者となった者、三親等内の親族で生計を一にする者、をいいます。

 

<社交上の香典や贈答品>

個人から受ける香典、花輪代、お中元、お歳暮、お祝金、お見舞金などは、社交上必要なもので、社会通念上相当と認められるものについては、贈与税はかかりません。

 

<公益事業用の財産>

宗教、慈善、学術などの公益を目的とする事業を行う個人などが、贈与された財産で公益事業に使うことが確実と認められるものは、贈与税がかかりません。

 

<特定公益信託から交付される金品>

特定公益信託で学術を奨励するものとして財務大臣の指定するものから交付される金品、および、学生・生徒に対する学資の支給を行うことを目的とする特定公益信託から交付される金品については、贈与税はかかりません。

 

<心身障害者共済制度にもとづく給付金の受給権>

特定障害者が、特定障害者扶養信託契約によって信託の受益権者になったときは、そのうち6,000万円(特定障害者のうち特別障害者以外の者については3,000万円)までは贈与税がかかりません。

 

<離婚に際しての財産分与>

離婚による財産の分与は、財産分与請求権にもとづき支払われるもので、贈与により取得した財産ではないので贈与税はかかりません。

しかし、分与された財産が、婚姻期間中の夫婦の協力によって得た財産の額や、そのほかの一切の事情を考慮してもなお過大であると認められる場合や、離婚後、ごく短期間で復縁するなど離婚を手段とした税金の回避行為と認められる場合には、贈与税がかかります。

 

<債務免除や債務の肩代り>

債務免除等による利益を受けた場合であっても、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、債務の免除を受けた又は債務者の扶養義務者に債務の引受け又は弁済をしてもらったときは、その債務の弁済が困難である部分については、贈与税はかかりません。

 

<会社からの贈与財産>

贈与税は、個人から個人へ財産が移転した場合にかかります。

したがって、会社から個人が財産をもらった場合には、贈与税はかかりません。

ただし、財産をもらった個人には、所得税がかかります。

 

<相続開始の年に被相続人から贈与を受けた財産>

 相続や遺贈によって財産をもらった人が、被相続人からその相続があった年に、贈与によってもらった財産については、贈与税はかかりません。

 ただし、生前3年以内の贈与として、相続税がかかります。

 

<直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金>

 直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与により、居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、贈与税はかかりません。

 

<直系尊属から一括贈与を受けた教育資金>

 個人が教育資金に充てるため、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した金銭等で一定の要件を満たすときは、1,500万円までは贈与税はかかりません。

 

<直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金>

 個人が結婚・子育て資金に充てるため、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した金銭等で一定の要件を満たすときは、1,000万円までは贈与税はかかりません。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#36 相続税における障害者に対する制度

 相続人の中に85歳未満で障害者がいる場合、相続税の額から一定の金額を差し引いて軽減する制度(以下「障害者控除」といいます。)があります。

 

障害者控除が受けられるのは、次の全てに当てはまる人です。

1.相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人や非居住被相続人である

  場合を除きます。) 

2.相続や遺贈で財産を取得した時に障害者である人

3.相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であ

  ること

 

また障害者とは、次に掲げるような心身に障害のある人です。

1.精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人(特別障害者となります。)

2.精神保健指定医などにより知的障害者と判定された人(重度の知的障害者と判定された人は特別障害者となります。)

3.精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人(障害等級が1級と記載されている人は特別障害者となります。)

4.身体障害者手帳に身体障害者として記載されている人(障害の程度が1級又は2級と記載されている人は特別障害者となります。)

5.戦傷病者手帳の交付を受けている人(障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までと記載されている人は特別障害者となりま

  す。)

6.原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている人(特別障害者となります。)

7.いつも病床についていて、複雑な介護を受けなければならない人(特別障害者となります。)

8.精神又は身体に障害のある65歳以上の人で、その障害の程度が1、2又は4に掲げる人に準ずるものとして市町村長や福祉事務所長の認

  定を受けている人(1、2又は4に掲げる人のうち特別障害者となる人に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人は特別障害

  者となります。)

 

なお、65歳以上の人で介護保険法の介護認定を受けた人については、一定の基準を満たせば上記8の市町村長等の認定を受けることができる可能性がありますので、市町村に適用の有無について確認していただく必要があります。

 

障害者控除の額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年(年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。)につき10万円で計算した額です。この場合、特別障害者の場合は1年につき20万円となります。

 

 この制度は、被相続人の死後に残された障害者の生活の安定を図る見地から、障害者であるがゆえに余分に生活経費等がかかることを考慮して、昭和47年度税制改正において創設されたものであり、その控除額はその後の改正により引き上げられてきました。

 平成25年度税制改正においては、20年以上据え置かれてきた控除額について、昭和63年以降の物価上昇率、今般の相続税の見直しによる負担増等を勘案して、平成2711日以後の相続等より10万円(特別障害者は20万円)に引き上げることとされました。

 

 また、障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないことがあります。この場合は、その引き切れない部分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。

 

※扶養義務者とは、配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。

 

 なお、その障害者が今回の相続以前の相続においても障害者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 


#35 相続税の配偶者控除

  婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産(居住用不動産を取得するための金銭を含む)の贈与があった場合には、その贈与を受けた者については、その年分の贈与税の課税価格から、基礎控除110万円の他に最高2,000万円まで控除できるという特例があります。

 

<適用を受けるための要件>

1)贈与時点で夫婦の婚姻期間が20年を経過していること

2)贈与された財産が、国内にある居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること

3)贈与を受けた年の翌年315日までに、その取得した居住用不動産又はその金銭で取得した居住用不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること

 

なお、同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しかこの適用を受けることができません。

 

<対象となる居住用不動産の範囲>

居住用不動産は、贈与を受けた配偶者が居住するための国内の家屋又はその家屋の敷地で、借地権も含まれます。

なお、居住用家屋とその敷地は一括して贈与を受ける必要はありません。

したがって、居住用家屋のみあるいは居住用家屋の敷地のみ贈与を受けた場合も配偶者控除を適用できます。この居住用家屋の敷地のみの贈与について配偶者控除を適用する場合には、次のいずれかに該当することが必要です。

1)夫又は妻が居住用家屋を所有していること。

2)贈与を受けた配偶者と同居する親族が居住用家屋を所有していること。

例えば、

(イ)妻が居住用家屋を所有し、その夫が敷地を所有しているときに妻が夫からその敷地の贈与を受ける場合

(ロ)夫婦と子供が同居していて、その居住用家屋の所有者が子供で敷地の所有者が夫であるときに、妻が夫からその敷地の贈与を受ける場合

 

また、居住用家屋の敷地の一部の贈与であっても、配偶者控除を適用できます。

 

 

<適用を受けるための手続き>

次の書類を贈与税の申告書に添付する必要があります。

1)贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本

2)贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本の附票の写し

3)居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた者がその居住用不動産を評価するための書類(固定資産税評価証明書など)

 

 

(参考)

国税庁HP  https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4455.htm

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#34 住宅取得等資金の贈与

  平成2711日から平成331231日までの間に、直系尊属から住宅取得等資金(新築、増改築も可)の贈与を受けた場合において、一定の要件を満たすときは、契約日に応じた非課税限度額まで、贈与税が非課税となります。この特例は、暦年贈与や相続時精算課税との併用適用が可能です。

 

要件1 贈与者

〇直系尊属であること。

父母、祖父母など直系の自分より前の世代です。

配偶者の父母などは×、養子縁組は〇です。

 

要件2 受贈者

〇贈与年の11日において、20歳以上であること。

〇贈与年の合計所得金額が2,000万円以下であること。

〇贈与年の翌年315日までに取得すること。

〇贈与年の翌年315日までに入居すること又は遅滞なく入居することが確実であること(贈与年の翌年1231日までに入居していないときは特例適用を受けることができないため、修正申告が必要となります)。

 

要件3 住宅

〇床面積が50㎡以上240㎡以下で1/2以上が受贈者の居住用であること。

〇中古の場合は、取得日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであると一定の書類で証明されたものなど。

〇増改築の場合は耐震などの一定の工事に該当することにつき証明されたもので、工事費用が100万円以上であるもの。

 

要件4 申告

贈与税が非課税でも、特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書の提出は必要です。その他戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付しなければいけません。

 

非課税限度額

住宅等取得の契約締結日        消費税10%※          左記以外

                 省エネ等   左記以外    省エネ等    左記以外

~平成271231日         -      -     1,500万円   1,000万円

平成281月~平成313月      -      -     1,200万円    700万円

平成314月~平成323月    3,000万円  2,500万円    1,200万円    700万円

平成324月~平成333月    1,500万円  1,000万円    1,000万円    500万円

平成334月~平成3312月    1,200万円   700万円     800万円    300万円

※住宅に含まれる消費税の税率になります。個人間の売買での中古の取得は原則消費税等がかかりませんので左記以外の控除額になります。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#33 より使いやすくなった!事業承継税制2

 今回も平成29年度税制改正において見直しが行われた事業承継税制について確認していきます。

前回、主な改正点として

(1)人手不足の中での雇用要件の見直し

(2)早期かつ計画的な取り組みの促進~生前贈与の促進~

2つがありましたが、(2)についてもう少し詳しく確認していきます。

 

〇人手不足の中での雇用要件の見直し~人手不足への対応~

 ・深刻な人手不足の中で、特に小規模事業者において、雇用要件が高いハードルになっている。

 ・災害や経営環境の激変(事故・災害、取引先の倒産等)時も原則として雇用要件が課されるため、利用を躊躇する要因になっている。

            ↓

 ・従業員5人未満の事業者について実質的に雇用要件の緩和を図る。

  (4人→3人、3人→2人、2人→1人が認められる)

 ・災害や経営環境の激変時における雇用維持の困難化に対応するため、セーフティネット(雇用要件の弾力化)を措置

 

〇早期かつ計画的な取組の促進~生前贈与の促進~

 ・贈与税の納税猶予中、雇用要件等を満たせず認定取消になると、相続税よりも高額な贈与税を納税する必要がある。

 ・事業承継後5年経過後も、先代死亡時に相続税の猶予へ切り替えるには、中小企業要件等を課される。

            ↓

 ・相続時精算課税との併用を認めることで、贈与税の納税猶予取消時の納税額を、相続税と同等とする。

 ・成長を阻害する先代死亡時の切替要件を廃止(中小企業要件・非上場要件)

 

※以上のほか、手続きの簡素化によりさらなる利便性の向上を図る。

            (経済産業省資料より)

 

〇相続時精算課税制度に係る贈与が、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えられました(措法707②五ロ)

 改正前の事業承継税制では、暦年課税選択者に限らず、相続時精算課税適用者であっても暦年課税による適用だけに限られていました。そのため、贈与税の納税猶予中に雇用確保要件等を満たすことができず認定取り消しになってしまうと、相続税よりも高額な暦年課税により計算した贈与税を納税しなければならない事態に陥りました。

しかし、今回の改正により、相続時精算課税適用者は、贈与税の納税猶予制度の適用を受ける受贈株式についても、相続時精算課税制度の適用が認められることになりました。また、新たに相続時精算課税の適用を選択して贈与税の納税猶予制度の適用を受けることも可能となりますので、この暦年課税計算による課税リスクを軽減することができるようになります。

ただし、相続時精算課税制度を新規に適用した場合、その適用年分以降における先代経営者からの贈与については、同制度を適用することが必要であり、暦年課税の適用ができなくなります。例えば、翌年以降に先代経営者から110万円以内の現金贈与を受けた場合であっても、贈与税の申告が必要となるので注意が必要です。

また、贈与税の納税猶予の適用を受けた後に、贈与者が死亡した場合における会社の要件が緩和されました。改正前は贈与税の納税猶予期間中に贈与者である先代経営者が死亡した場合、相続税の猶予へ切り替える際には、中小企業であることと及び非上場企業であることが要件でした。しかし、今回の改正により、この要件が撤廃されました。

 

中小企業のオーナーにとって、自社株に対して多額の相続税が課されることは問題ですが、相続税を気にするにあまり会社の経営にしわ寄せが及ぶことも、またこれも問題です。一定の要件を満たし所定の手続きを行えば、会社に負担をかけず円滑な事業承継が可能となりますので、自社株がある場合には、一度検討してはみてはいかがでしょうか。

 ただし、事業を承継することを支援するための税制であることから、事前の計画的な準備が欠かせませんので、早めの相談・取組が必要です。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#32 より使いやすくなった!事業承継税制

 事業承継税制とは、先代経営者から後継者が事業を承継する際に発生する贈与税や相続税などの税金を、一定の要件のもとに猶予・免除することによって、中小企業の事業承継を税制面から支援する制度です。

 この制度は平成21年度税制改正により創設された制度です。しかし、適用するための手続きの煩雑さや厳しい適用要件のためか利用者は低い水準にとどまっていました。

制度の利用を推進すべく、創設以来何度も改正が行われた結果、少しずつ利用者が増えてきていましたが、中小企業経営者の高齢化が進行していること等を踏まえ、早期かつ計画的な事業承継の促進のため、平成29年度税制改正において更に使いやすくするための見直しが行われました。主なものは以下の2つです。


(1)人手不足の中での雇用要件の見直し

  深刻な人手不足の中で、特に小規模事業者において高いハードルとなっていた雇用要件が緩和されました。


(2)早期かつ計画的な取り組みの促進~生前贈与の促進~

   贈与税の納税猶予の適用を受けても、認定が取り消された場合に高額の贈与税負担が発生するリスクがありましたが、相続時精算課税制度との併用を認めることにより、リスクの軽減が図られました。


事業承継税制は、これまでの改正によりだんだんと使いやすい制度になってきており、今後は利用者の増加が予想されています。

財産に非上場株式がある場合は、一度検討してみてはいかがでしょうか。

 ただし、事業を承継することを支援するための税制であることから、事前の計画的な準備が欠かせませんので、早めの相談・取組が必要です。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#31 遺言により相続財産を寄附した場合の相続税の課税関係

  相続や遺贈によって取得した財産を国や地方公共団体または特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合や特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合は、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例があります。

 

<公益財団等へ遺贈等により財産を寄附した場合>

遺言書に「現金〇〇万円を△△会に遺贈する」というような指定があった場合、宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う人で一定の要件に該当する人が、相続や遺贈によって取得した財産で、その公益を目的とする事業の用に供することが確実なものは、相続税が非課税とされています。

なお、その寄附が親族に対して特別の利益を与える行為に該当する場合や、相続または遺贈により取得した日から2年を経過した日において、なお公益事業の用に供していないときには、その財産の価額はさかのぼって遺贈等を受けた人の相続税の課税価格に算入されることになります。

 

<国等に相続した財産を寄附した場合>

遺言書に「相続人甲が相続した預金から、□□町に現金〇〇万円を寄附してください」というような指定があった場合、相続や遺贈によって財産を取得した人が、原則として、相続税の申告期限までに、その相続や遺贈によって取得した財産を、国若しくは地方公共団体または教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人等(以下「特定の公益法人等」といいます。)に対して贈与した場合には、その贈与したことによって、その贈与者またはその親族等の相続税や贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除いて、その贈与した財産には相続税がかかりません。

なお、特定の公益法人等の範囲は独立行政法人や社会福祉法人などに限定されており、寄附の時点で既に設立されているものでなければなりません。

また、この特例は、その寄附を受けたものが特定の公益法人等であるときには、その法人が、その寄附を受けてから2年を経過した日までに、特定の公益法人等に該当しないこととなったとき、または寄附を受けた財産を、寄附を受けた日から2年を経過した日において、なお公益を目的とする事業の用に供していないときは、その財産の価額は、相続税の課税価格に算入されることになります。この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、その適用を受ける旨を記載し、かつ、その適用を受ける寄附財産の明細書その他所定の書類を添付しなければなりません。

 

<特定公益信託の信託財産に支出した場合>

遺言書に「私(遺言者)の相続財産から現金〇×万円を△□信託会社で●●高校の生徒の学資の支給を目的とする信託としてください」というような指定があった場合、相続や遺贈によって財産を取得した人が、相続税の申告期限までに、その相続財産に属する金銭を、特定公益信託のうち、その目的が、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する特定公益信託の信託財産とするため支出した場合には、その支出した者またはその親族等の相続税や贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除いて、その支出した金銭の価額には相続税がかかりません。

特定公益信託の要件には、

1.受託者は、信託会社(信託銀行を含む)に限られること

2.残余財産は国等に帰属するか類似の目的のための公益信託として継続するものであること

などがあります。

 なお、相続または遺贈により取得した日から2年を経過した日までに特定公益信託に該当しないこととなった場合には、その財産の価額は、相続税の課税価格に算入されることになります。この特例を受けるためには、相続税の申告書に、その適用を受ける旨を記載し、かつ、支出した財産の明細書その他所定の書類を添付しなければなりません。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#30 相続税の納付の方法

  国税を納付する場合、①現金で納付する方法、②金融機関の口座から振替納税する方法、③電子納税(ダイレクト納付やインターネットバンキング等)を利用する方法、④クレジットカードで納付する方法(手数料必要)があります。

 

また相続税や贈与税に関しては、財産課税という性格上、期限までに納付ができない場合には「延納制度(分割納付)」があり、さらに相続税については、金銭納付が困難で、かつ、一定の要件を満たす場合には、「物納制度(財産納付)」が認められています。

 

「延納制度」は、納付することとなった相続税額(贈与税額)が10万円を超え、納期限までに金銭で納付することが困難な事由がある場合には、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより分割で納めることができます。この延納期間中は利子税がかかります。

 

「物納制度」は、金銭で納付することが原則ですが、相続税に限っては、納付すべき相続税額を納期限までに延納によっても金銭で納付することが困難な事由がある場合には、その納付を困難とする金額を限度として、一定の相続財産で納付することが認められています。

なお一定の相続財産とは、納付すべき相続税額の基礎となった日本国内にある相続財産で、次に掲げる財産及び順位となります。

① 第1順位 国債、地方債、不動産、船舶

② 第2順位 社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券

③ 第3順位 動産

 

国税庁のホームページに平成27年度までの相続税の物納・延納処理状況等が掲載されています。平成27年度の延納申請件数は1,376件(金額439億円)、物納申請件数は130件(金額69億円)でここ数年は減少傾向にあります。

 

その要因の1つとして相続開始前から納税対策を行う納税者が増えたことが考えられます。現預金、上場株式など比較的現金化しやすい資産があれば問題ありませんが、不動産や非上場株式など現金化が困難な財産が大部分を占めている場合は、相続税を納税することが困難となる場合もあります。

 生前に相続税額を試算して足りない資金は不動産を整理・売却することで納税資金を確保しておくことも必要となってきます。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#29 相続した財産を譲渡した場合

 2月も中旬になり所得税の確定申告の時期になりました。今回は、相続した財産を譲渡した場合についてご紹介します。

 通常、土地や株式を譲渡した場合、譲渡所得として所得税が課税されます。これは相続した財産を譲渡した場合も同様です。譲渡所得は、売却金額から取得費・譲渡費用を差し引いて計算します。例えば、100万円で購入した株式を120万円で売却した場合、譲渡所得の金額は20万円となります(売却金額120万円-取得費100万円=20万円)。

 

 相続した財産を譲渡した場合、取得費について注意すべきことがあります。それは、取得費は被相続人の取得費を引継ぐということです。上記の例で、被相続人が100万円で購入した株式を50万円(相続時の時価)で相続した場合、その株式を譲渡するときの取得費は、相続時の時価50万円ではなく、被相続人の取得費である100万円となります。そのため、譲渡所得の金額は、上記例と同じ20万円となります。

 また、相続税の申告期限から3年以内に相続した財産を譲渡した場合、その財産に係る相続税額を取得費に加算することができます。ただし、加算することができるのは譲渡所得がある場合に限られ、譲渡損失の場合は、適用できません。例えば、被相続人が100万円で購入した株式を80万円で売却した場合、20万円の損失となるため、この場合は、取得費に相続税額を加算することはできません。

 なお、この相続税額を取得費に加算する場合の計算については、同一年中に2以上の財産を譲渡した場合には、それぞれの財産ごとに計算します。

                                                                                                      ▲ページトップへ戻る 

#28 取引相場のない株式の評価の見直し

 平成29年度税制改正大綱により取引相場のない株式の評価の類似業種比準方式について見直しが行われる予定です。

 

1)類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均を加える。

2)類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする。

3)配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:1:1とする。

 

注目すべきは(3)の改正です。取引相場のない株式の原則的評価は類似業種比準方式と純資産価額方式を会社の規模に応じて、それぞれ単独もしくは併用することにより評価します。今回見直しが行われる予定の類似業種比準方式とは、業務内容が類似する業種目の上場会社の株価から3要素(配当額、利益金額、簿価純資産価額)を比準して、評価する会社の株価を求める方法です。大会社は原則として類似業種比準方式により評価します。現行では3要素の割合は配当金額:利益金額:簿価純資産価額 = 1:3:1 であり、利益金額に3を乗じることになるため、利益を多く計上している会社は株価が高くなる傾向にありました。

計算式は(1+3+1)/5 → (1+1+1)/3となりますので、今まで株価が高かった、利益を多く計上している会社は株価が下がり、一方利益が少なく内部留保(=純資産価額)が多い会社では株価が上がることになります。

なお、今回の改正では会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲の拡大も予定されています。中・小会社の多くは 類似業種比準価額 < 純資産価額 であると思われますので、規模区分がワンランクアップすれば株価が下がる可能性があります。

この改正は平成2911日以後の相続・贈与により取得した財産の評価に適用されます。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#27 相続税等の納税義務者の見直しについて

     

 相続税の納税義務者については、以前の相続税ミニコラム(11)で紹介したとおりです。平成29年度税制改正大綱によりこの納税義務者について以下のような見直しが行われる予定です。

 国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、被相続人等及び相続人等が相続開始前10(現行5)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこととする。(日本国籍を有しない相続人等の要件についても改正は行われていますが、今回は割愛いたします。) <参照:平成29年度税制改正大綱()より一部抜粋>

 このように、日本国籍を有している者について国外財産が課税対象外とされるのが、現行の相続人等と被相続人等が相続等開始前5年超日本に住所を有していない場合から、今回の改正案により10年超日本に住所を有していない場合に限られることとなります。

 このような改正が行われる背景には、富裕層が財産を国外移転して、所得税や相続税等の租税回避を行うことが大きな問題となっているからと考えられます。この問題の解決のために平成27年度の税制改正において国外転出時課税が設けられましたが、さらなる解決のための改正だと思われます。

 なお、相続税だけでなく贈与税の納税義務についても同様としており、平成2941日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用される予定です。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#26 孫が受取人の死亡保険金

  相続税対策として代表的なものに「生命保険の活用」があります。生命保険の保険金は、指定された受取人の固有財産となるので、財産を渡したい人に確実に渡すことができる点で優れています。

そこで、かわいい孫のためにと自分が被保険者及び契約者となり、保険料は自分が負担して死亡保険金の受取人を孫とする生命保険に加入したとします。この場合、自分が被保険者であるので、孫は死亡保険金を受け取ることはできますが、いくつか注意すべきことがあります。


まず、生命保険の受取人となった孫は、「相続又は遺贈により財産を取得した者」となり、相続税を納めなければなりません。その際、法定相続人でない孫は2割増の相続税を負担することになります。また、生命保険には相続人1人あたり500万円の非課税枠がありますが、法定相続人でない孫には非課税枠もありません。


 そして、最も注意しなければならないのは、「相続前3年以内の贈与の加算」です。

 相続税ミニコラムの「♯14 相続開始前3年以内に贈与を受けた財産」に、“相続開始前3年以内の贈与財産を相続税に加算する必要があるのは、あくまで被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者に限られます。相続の発生が近いと予想される場合であっても、相続により財産を取得しない孫への贈与をすれば、相続税の計算で加算することはありません。”とあります。この記載のとおり、相続の発生が近いと予想される場合であっても孫への贈与であれば有効な場合がありますが、上記のような生命保険に加入している場合に受取人である孫に贈与をしてしまうと、かえって相続税額が増えてしまう結果になるかもしれません。贈与税の非課税枠は年110万円ありますが、非課税枠内の贈与であっても相続財産に加算され、しかも2割増しの相続税がかかることになりますので注意が必要です。

 このような思わぬ税金の負担を負わないためにも、事前に生命保険の加入関係等を整理しておく必要があります。そして、相続対策を行なう場合も、全体の財産や家族構成を考慮して相続税対策を行ない、その後も継続的に見直しを行う必要があります。

                                                                             ▲ページトップへ戻る 

#25 寄与分を取得した相続人に対する課税

 相続人のうちで、被相続人の生前にその財産の維持や増加につき貢献した人がいた場合、その人を相続において有利に扱う方法として、民法は「寄与分」という制度をもうけています。

寄与分が認められるケース(民法904条の2第1項による)としては、

1.被相続人の事業に関して労務を提供した場合

2.被相続人の事業に関して財産上の給付をした場合

3.被相続人の療養看護をした場合

4.そのほかの方法による場合

で、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした者があるときに、寄与分が認められる、とされています。

 

仮に、被相続人の事業に関して労務を提供した場合であっても、その相続人が被相続人から相当の対価(給料)を得ていた場合には、この相続人に寄与分を認める必要はありません。また、相続人が被相続人にお金を利息付で貸したとして、被相続人の財産中からその返還を求めることは法律上できますので、そういう請求があった場合は、消費貸借契約にもとづく請求として処理すればよいので寄与分の問題にはなりません。

しかし、一般的に親族間では、改めて契約を結んだり(雇用契約、消費貸借契約)、その履行を求めるということが少ないので、こういう契約上の請求ではなく、遺産の分割に際して寄与分の請求がなされたときは、その相続人に寄与分を認めて遺産分割することにより処理しようとするものです。

しかし、寄与分が認められるためには、相続人が被相続人に対し、単に精神的に援助をした、ということではなく、例えば、被相続人の療養看護をすることによって、付添看護師の費用を払わずに済み、その分の生活費の費消が防げたというように、被相続人の財産が維持されたり、増加したことが必要です。

相続税の申告期限までに、遺産の分割がされない場合は民法に定める相続分の割合によって相続財産と承継債務の金額を計算し、相続税の申告を行います。

この場合の「民法に定める相続分」は、寄与分を考慮しないで考えます。

「寄与分」は、相続人間の協議で決まり、協議が調わないときは、家庭裁判所の審判により決まります。寄与分がある者の具体的相続分は、遺産総額から寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をもってその寄与した人の相続分とします。

                                                                              ▲ページトップへ戻る

#24 配偶者に対する相続税の軽減

 配偶者は「相続で財産を取得しても相続税がかからない。」とよく言われますが、どのような場合であっても無税かというと、そうではありません。

 

 被相続人の配偶者は、同一世代間の財産移転であるため次の相続までの期間が短いと予想され、その際に再び相続税が課税されること、残された配偶者の老後の生活を保障する必要があること、また配偶者は被相続人の財産形成に貢献していると考えられることなどから、相続税について大幅に軽減される制度が設けられています。

 

ここで言う配偶者とは、その被相続人との婚姻について、民法の規定により婚姻の届出をしている者に限られます。したがって、事実上婚姻関係と同様の事情にある者であっても婚姻の届出をしていない、いわゆる内縁関係にある者は含まれません。

 

 配偶者が相続または遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは相続税はかからないことになります。

 1.1億6,000万円

 2.配偶者の法定相続分相当額

 もしこの金額を超えて相続財産を取得した場合には、この金額を超えた部分に対応する相続税を支払うことになります。

 

 ここで注意したいのは、その配偶者から子供への相続(第2次相続)を考えた場合です。ケースによっては最初の相続(第1次相続)で配偶者の税額軽減をフルに活用して、限度額まで配偶者が財産を取得すると、第2次相続で多額の相続税が課税させられる場合があります。

 配偶者への遺産分割にあたっては、第1次相続および第2次相続を通算した相続税額を考慮することも必要となってきます。

 

 この配偶者の税額軽減は、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象となりません。(その後、申告期限から3年以内にその財産が分割された時は所定の手続きにより税額軽減の対象となります。)

 

 なお、配偶者の税額軽減は相続税の申告書を提出することで適用を受けることができる制度であるため、この適用を受けることによって納付すべき相続税額がゼロとなる人であっても、申告書の提出を忘れないように注意する必要があります。そして、税額軽減の明細を記載した相続税の申告書に戸籍謄本と遺言書の写しや遺産分割協議書の写しなど、配偶者の取得した財産が分かる書類を添えて提出してください。

                                                                              ▲ページトップへ戻る

#23 相続人以外の者が財産を取得した場合

     

 相続または遺贈により財産を取得した者が、相続人である場合と相続人以外の場合とでは相続税の負担に違いが生じます。

 相続税の計算をするうえで、相続人(法定相続人)あるいは包括受遺者でなければ、適用を受けることができない規定があります。その主な規定は、以下のとおりとなっています。

 なお、亡くなった人が遺言により財産を譲り渡すことを遺贈といい、包括遺贈とは遺産全体に対する分量的割合で行われる遺贈(遺産の3分の1など)で、包括遺贈により財産を取得した者を包括受遺者といいます。特定遺贈とは、特定の財産(〇〇銀行の預金や△△の土地など)を与えることを内容とする遺贈をいいます。(詳しくは相続税ミニコラム平成274月号「遺言によってできること」をご参照ください。)

(1)相続人のみ適用をうけることができる規定

  生命保険金等の非課税

  退職手当金等の非課税

  未成年者控除

  障害者控除

  相次相続控除


 (2)相続人または包括受遺者が適用を受けることができる規定

  債務控除

  立木の評価減

 相続人以外の者が特定遺贈により財産を取得した場合、上記の規定は適用できませんので、ご注意ください。例えば、配偶者の親から特定遺贈により財産を取得した場合において、葬式費用等の債務を負担しても相続財産から控除することはできません。また、孫が生命保険金を受け取った場合、非課税の適用を受けることはできません。

                                                                              ▲ページトップへ戻る

#22 みなし相続財産~生命保険~

「法律の改正があって、自宅を妻に贈与しても税金がかからなくなったというのは本当ですか?」少し前にこのような質問を受けました。

現在衆議院にて審議中の改正民法の中に盛り込まれている遺産分割に関する改正と税金の話が一緒になってしまい混乱しているので、少し整理してお答えしました。


1.遺産分割に関する改正


まず改正民法の中の遺産分割に関する改正とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で配偶者に居住用の不動産を遺贈または生前贈与をしたときは、持戻し免除の意思表示があったものと推定し、遺産分割の対象としないものとするという改正です(改正民法903条4項)

現行民法では、「自宅は配偶者に相続させる」という遺言があるときや配偶者に自宅の生前贈与をしている場合でも、特別受益者の相続分(民法903条)の規定により、その財産(自宅)を相続開始の時に相続人が有する財産に持戻して合算したうえで、各相続人の相続分を算定することになります。このため、財産が自宅とわずかな預貯金のみというケースで配偶者以外の相続人が法定相続分の財産の相続を希望する場合は、自宅を売却して金銭で分配する場合もあり、残された配偶者が住み慣れた自宅を追われる恐れがあります。また、配偶者が自宅を相続できたとしても、自宅の評価額が高ければ高いほど他の財産を受け取る余地が少なくなり、生活資金に困るなど不安な状態に陥ることも考えられます。

改正後は、遺贈または生前贈与された自宅は遺産分割の対象から外されることとなりますので、配偶者は自宅に住み続けることができ、他の財産を取得できる可能性も広がるので配偶者の老後の生活保障が厚くなります。


2.配偶者の居住権


このほか今回の民法改正では、配偶者の居住権の創設も注目されています。これは、配偶者が被相続人の財産である建物に相続発生時(被相続人が亡くなったとき)に居住していた場合において、①遺産分割によって配偶者居住権を取得したとき②配偶者居住権が遺贈の目的とされたときは、配偶者が終身または一定期間住み続けることができる権利です。(改正民法1028条1項)配偶者が配偶者居住権を取得した場合には、その財産価値に相当する価額を相続したことになりますが、自宅の所有権よりは評価額が低くなると考えられることから、生活費に充てる預貯金などを相続する余地が増えます。

以上のように、高齢化や家族関係が時代とともに変化していく中、残された配偶者の老後の住まいや生活費を確保しやすくするための民法改正が行われる予定です。


3.贈与税の配偶者控除


一方、税金についてですが、配偶者に対する贈与には「贈与税の配偶者控除」があり、夫婦間で居住用不動産またはその購入資金の贈与があったとき、婚姻期間20年以上などの一定の要件を満たせば、2,000万円までは贈与税を非課税とする制度があります。相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産がある場合、通常の贈与では、その財産も相続税の計算の際、課税価格に加算する必要がありますが、この特例の適用を受けて被相続人から贈与された居住用財産については、その必要はありません。この特例の改正は今のところありませんので、基礎控除の110万円と2,000万円の合計額を超える自宅を贈与した場合は課税されることとなります。

税金の問題については、改正民法成立後の財産評価基本通達の改正で、相続税の計算の際、居住権や居住権付き不動産をどう評価することになるのか等、今後も注目されるところです。

なお、配偶者居住権は婚姻期間にかかわらず適用されるようですが、遺言がない場合は遺産分割協議によることになるので、必ず適用できる保証はありません。また、遺言がある場合はそちらが優先されることになりますが、家族の事情によってはこの事が家族間の新たな問題となる場合もあるので、これまで以上に慎重な生前対策が重要になってくると思われます。

 被相続人が生前に所有していた本来の相続財産ではありませんが、被相続人の死亡により相続人が取得した財産をみなし相続財産といいます。相続人が享受する経済的価値は、みなし相続財産も本来の相続財産と同じであると考えられるため、これも相続税の課税対象となる財産です。   死亡保険金は相続税がかかる財産(みなし財産)です、というのはよく知られたことだと思いますが、被相続人の死亡による保険金の支払いがなくても、被相続人が保険料を負担していた保険については、相続人が取得した権利として相続財産となります。

 例えばAさんが亡くなった場合

  • Aさんの妻を被保険者とする生命保険契約の保険料をAさんが負担していた。
  • Aさんの妻が契約していた個人年金の保険料をAさんが負担していた。
  • Aさんは個人年金受給中に死亡し、妻が継続して残りの年金を受け取ることになった。

 
 これら全てみなし相続財産となります。亡くなったときに保険金を受け取っていないので、相続税の申告に漏れがちな財産です。
 さらに注意する点は、死亡保険金のうち、500万円×法定相続人は非課税となりますが上記の例の場合はこの非課税枠は使えません。
 よかれと思って加入した保険でも思わぬところで課税対象となっているかもしれませんので注意が必要です。 

#21 相続人の中に成年被後見人がいる場合

 前回は「相続人の中に未成年者がいる場合」の注意点について述べましたが、今回は「相続人の中に成年被後見人がいる場合」の注意点について述べたいと思います。

 遺産分割協議には、原則、成年後見人が成年被後見人を代理して参加することになります。そのため遺産分割協議書には、成年後見人が署名するため、印鑑証明書は、成年後見人のものが必要となります。さらに、成年後見人の資格を証する書面として、“後見に関する登記事項証明書”を添付します。ただし、成年後見人自身も相続人である等、成年被後見人との間で利益相反行為となる場合には、未成年者の場合と同様に特別代理人の選任をする必要があります。

 また、成年被後見人は、相続税の特別障害者控除の対象となります。これは、平成26年3月14日、東京国税局が、「成年被後見人は相続税の特別障害者の控除が適用できる」旨の回答を公表したためです。これにより、相続人が障害者でなくとも成年被後見人であれば適用されることとなります。

 相続税の申告及び納付期限は相続開始から10ヶ月以内です。家庭裁判所に成年後見人等の申し立てをしてから成年後見人等が選任されるまで、3~6ヶ月程度かかることが大半ですので、早めのご相談をお勧めします。


「成年被後見人の相続税における障害者控除の適用について」国税局ホームページ
https://www.nta.go.jp/tokyo/shiraberu/bunshokaito/souzoku/140314/01.htm 

#20 相続人の中に未成年者がいる場合~Part2

 前回の「相続人の中に未成年者がいる場合」では、相続人の中に未成年者がいる場合、その未成年者の年齢に応じて相続税額から一定の金額を控除することができる「未成年者控除」について解説しました。今回は、税金の話とは少し離れてしまうのですが、相続人の中に未成年者がいる場合の注意点について述べたいと思います。

 相続では、法定相続人の年齢に関係なく全員が相続人になります。そして、未成年である相続人も含めた相続人全員で、遺産分割協議を行うことになります。ところが、遺産分割協議は「法律行為」であり、未成年者は単独で法律行為を行うことができません。未成年が法律行為を行うときは、「法定代理人」のサポートが必要とされ、通常の場合であれば、親権者が法定代理人となり未成年者の権利を守るところです。しかし、例えば父親が亡くなり、母と子の2人が相続人となるような場合で、もし母が子の法定代理人として遺産分割協議を行うことができれば、自身に都合の良いように遺産分割協議を行うことが可能となってしまいます。実際にどうするかは別として、このように互いの利益が相反する関係になる場合は、親権者の代わりに、相続に関係のない者を子の代理人=特別代理人として選任し、特別代理人が子に代わって他の相続人と遺産分割協議を行うこととなります。

 特別代理人の選任は、親権者等からの「特別代理人の選任の申立て」により、家庭裁判所が行います。特別代理人は、相続人以外の成人であれば制限はないのですが、「未成年者1人に対して特別代理人1人」が必要となります。

 このように、相続人の中に未成年者がいる場合には、「特別代理人の選任」という手間が1つ増えると同時に、選任されるまでの時間もかかることになります。 

 相続税の申告期限は被相続人が死亡したことを知った日から10か月以内であり、長いようですがあっという間の10か月です。その間にやらなければならないことも様々ですので、早めのご相談をお勧めします。 

#19 退職金と弔慰金

 被相続人が亡くなって、相続人が、会社からもらった退職金は、みなし相続財産となり、相続税がかかります。 

 ところで、退職金のほかに、会社が遺族に対し、弔慰金、花輪代、葬祭料などを支払うことが、社会慣行となっています。

 弔慰金や花輪代などは、故人を弔う、遺族を慰める、何かと出費がかさむ遺族の負担をやわらげる、といった儀礼的・相互扶助的なものと考えられ、被相続人に支給されるべきであった退職金とは、性格が異なります。

 これらを考慮し、弔慰金は、税金と一切関係なく取り扱われています。

 弔慰金には、相続税も贈与税も所得税もかかりません。

 ただし、その金額が、社会的・常識的にみて、あまりにも多額、または、退職金の代わりに支払われたことが明白な場合には、死亡退職金として相続税が課税されることになっています。

 会社から遺族へ支給される金品は、退職手当金、功労金(以下「退職手当金等」)、弔慰金、花輪代、葬祭料など(以下「弔慰金等」)、いろいろの名義が付けられています。

 支給をうけた金額が、退職手当金等であるか弔慰金等であるかの区分は、これらの支給名義のいかんにかかわらず、その支給をうけた金額の合計額のうち、まず、実質上被相続人の退職手当金等と認められる金額を退職手当金等として先取りし、その残余の金額を弔慰金等とすることとされています。

 この場合の判定にあたっては、退職給与規程などの定めに基づくことになりますが、その定めがないときは、被相続人の地位、功労等を考慮の上、他の類似する企業の同等の地位にある人がうける額等を勘案して判定します。

 退職手当金等と弔慰金等の区分は、その実質によって判断するのが原則です。

 しかし、この実質判定は、困難をともなうため、相続税の取扱いでは、形式的な基準を設けて、この基準以内の金額は、弔慰金等とし、この基準を超えた金額は、退職手当金等とみなすこととしています。

 形式的な基準は、次の金額を弔慰金等として非課税としています。

  1. 業務上の死亡の場合・・・死亡時の賞与以外の普通給与の3年分
  2. 業務上の死亡でない場合・・・死亡時の賞与以外の普通給与の6ヶ月分

 なお、この非課税限度額は、弔慰金等の支払いをする会社ごとに適用して計算することになります。


 相続税の弔慰金等の形式区分における「業務上の死亡」についての具体的な判定に当たっては、労働者の災害補償に関連して示されている厚生労働省労働基準局の行政上の先例に準拠して取り扱うこととされています。

 労働法の分野における判例および行政解釈では、何か業務上の死亡であるかどうかの判断は、その死亡が労働者の業務遂行中に生じたものであり(業務遂行性)、かつ、死亡と業務との間に相当因果関係があること(業務起因性)により行うこととされています。

 なお、通勤途上の災害は、業務上の災害ではありませんが、昭和48年9月に通勤災害についても、業務上の災害の場合に準じて保険給付が行われることになったことから、相続税の取扱いでも、通勤途上の災害による死亡は、業務上の死亡に準じて取り扱われています。

 また、業務上の死亡であるかどうかを判断する場合には、何が原因で死亡に至ったかが重要であって、どこで死亡したかは、何が原因で死亡したかの一部分に含まれることであり判断の要因とはなりません。

#18 相続人の中に未成年者がいる場合

 相続人の中に未成年者がいる場合、その未成年者の年齢に応じて相続税額から一定の金額を控除することができる「未成年者控除」という制度があります。

 未成年者控除とは、相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続又は遺贈に係る被相続人の相続人に該当し、かつ20歳未満の者である場合に、その者の相続税額からその者が20歳に達するまでの年数(1年未満の端数は1年とします。)に10万円を乗じた金額を控除することとされています。

 この制度は、未成年である相続人が成年に達するまでの養育費等を控除する趣旨から、昭和25年のシャウプ勧告に基づき創設されたもので、当初の控除額は1万円で、昭和63年度の改正において6万円に引き上げられたものの、その後の控除額は20年以上据え置かれてきました。そして平成25年度改正により物価上昇率、今般の相続税の見直しによる負担増等を勘案して、平成27年1月1日以後の相続等より10万円に引き上げることとされました。

 また未成年者控除額が、その未成年者本人の相続税額よりも大きいため控除額の全額が引き切れないことがあります。この場合は、その引き切れない部分の金額をその未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くこととなります。

 相続税法上の扶養義務者には、配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、家庭裁判所で審判を受けて扶養義務者となった3親等内の親族も含まれることになりますが、審判を受けていない3親等内の親族でも相続開始時点で未成年者と生計を一にしていれば扶養義務者に該当することが認められています。

 なお、その未成年者が今回の相続以前にも未成年者控除を受けているときは、前回の控除不足額の範囲内に限られます。具体的には最初の相続時における未成年者の20歳に達するまでの年数に10万円を乗じて計算した金額から既に控除を受けた金額を控除した残額の範囲内の金額となります。


◇具体的な計算方法は以下の国税庁HPをご参照下さい。
 https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4164.htm 

#17 相続税の申告期限

 平成27年1月以降の相続から基礎控除額が引下げられた影響もあり、相続税の申告が必要となる方が増加しています(注1)。

 相続税の申告が必要な場合とは、相続または遺贈により取得した財産および相続時精算課税の適用を受ける財産(注2)の額の合計額(相続税の課税価格)が、遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるときです。この場合には、納付すべき相続税が発生しますので、基本的には相続税の申告が必要となります。反対に、相続税の課税価格が基礎控除額以下であるときは、納付すべき相続税が発生しませんので、申告の必要はありません。

 しかし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減(注3)など各種特例については、適用を受けるために申告が必要とされています。そのため、相続税が発生しないため申告の必要がない場合であっても、各種特例を適用する場合には申告をする必要があります。

 この場合に相続税の申告書をいつまでに提出しなければならないかというと、相続税の申告期限は、相続開始を知った日(通常は被相続人の死亡した日)の翌日から10ヶ月以内となっています。例えば、平成28年2月10日に死亡した場合には、平成28年12月10日までに提出しなければなりません。なお、提出期限が土曜日、日曜日または祝日であるときは、これらの日の翌日が申告期限となります。そのため、上記の例ですと平成28年12月10日は土曜日ですので、申告期限は12月12日となります。

 なお、申告期限までに遺産分割がまとまらなかった場合には、どうすればよいのでしょうか。相続税の申告は、相続財産が分割されていない場合であっても上記の期限までにしなければなりません。分割されていないということで相続税の申告期限が延びることはありません。そのため、申告期限までに遺産分割がまとまらなかった場合には、各相続人などが民法に規定する相続分(注4)又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をして申告することになります。その際、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など各種の特例が適用できないことになります。その後、相続財産の分割が行われた場合には、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの特例を適用して相続税を計算し、実際に分割した財産の額に基づいて修正申告または更正の請求をすることができます。(注5)

(注1)メールマガジン平成26年12月号「相続税の基礎控除額」参照。
(注2)TIMELY@Azure第14号「相続時精算課税」参照。
(注3)TIMELY@Azure第12号「相続税の税額控除」参照。
(注4)メールマガジン平成27年1月号「法定相続人と法定相続分」参照。
(注5)国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4208.htm参照。

#16 相続時精算課税

 相続税対策として相続財産を減らすには、相続税のかからない贈与(『TIMELY@Azure 第10号相続開始前3年以内に贈与を受けた財産』参照)が一番ですが、目的によってはメリットのある贈与として相続時精算課税があります。相続時精算課税とは、財産の贈与を受けたときに贈与税を支払い、その後、その贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた贈与税相当額を控除することにより、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。

 適用されるのは贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の推定相続人である子又は孫に対する贈与で、贈与税の申告期限までに納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」及び一定の書類を贈与税の申告書に添付して提出することが必要です。

 相続時精算課税を選択した贈与は2,500万円まで贈与税がかからず、贈与額が2,500万円を超えたところでその超えた額に対して一律20%の贈与税を納めることになります。相続時に合計する贈与財産の価額は、贈与をした時の価額となり、また、納めた贈与税相当額が控除しきれなかった場合は還付を受けることができます。したがって、相続財産の大小に関係なく、相続前に大きな額を贈与したい場合や、相続時には値上がりそうな株や土地などを現在の価額で渡したい場合にはメリットがある制度です。

 なお、この制度を一度選択すると、その贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、110万円の控除を受けられる暦年贈与へ変更することはできませんので、選択時は慎重に検討する必要があります。

#15 相続税の税額控除

 相続税では、基礎控除のほかにも以下のような控除の規定があり、該当する控除を利用することで、相続人等の税額から控除分を差し引くことができ、相続税額が軽減されます。

1. 贈与税額控除
 相続開始前3年以内の贈与財産を受けたものが、課税価格に加算された場合、その贈与財産にかかる贈与税を控除できます。
 <詳細は『#14 相続開始前3年以内に贈与を受けた財産』をご覧ください>

2. 配偶者の税額
 軽配偶者が相続した財産のうち、法定相続分または1億6千万円分までは税額が軽減されます。この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることとなっています。そのため、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象とはなりません。

 なお、配偶者とは、正式に婚姻届を提出して法的の認められたものであり、婚姻届を提出していない内縁関係者などは配偶者として認められません。

3. 未成年者控除
 法定相続人が未成年者(20歳未満)の場合に税額が軽減されます。未成年者控除の額は、その未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円(平成26年までは6万円)で計算した額になります。その際、1年未満の期間があるときは、切り上げてその分を1年として計算します。

4. 障害者控除
 法定相続人が85歳未満の障害者の場合に税額が軽減されます。障害者控除の額は、その障害者が一般障害者の場合は満85歳になるまでの年数1年につき10万円(平成26年までは6万円)、特別障害者の場合は20万円(平成26年までは12万円)で計算した額になります。その際、1年未満の期間があるときは、切り上げてその分を1年として計算します。

 ※3. 未成年者控除及び4. 障害者控除についてのみ、引ききれないときはその未成年者または障害者を扶養する親族とされる相続人から控除できます。

5. 相次相続控除
10年間に2回以上の相続があった場合に税額が軽減されます。
<詳細は『#12 短期間に重ねて相続があった場合』を参照してください>

6. 外国税額控除
 外国に相続財産があった場合には、外国でも相続税が課税されることがあります。その際に、外国で支払った相続税を日本の相続税から控除できます。これは外国でも日本でも相続税を支払った場合には二重課税となってしまいますので控除が認められています。

 上記以外にも相続時精算課税制度贈与税額の控除や医療法人の持分についての相続税の税額控除の特例の制度などがあります。


 <参照 国税庁タックスアンサー>
 https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/souzo32.htm

#14 相続開始前3年以内に贈与を受けた財産

「相続に備えて毎年贈与をしているのですが、その贈与した財産に相続税がかかる場合があると聞きましたが本当でしょうか?」答えはYESです。

 相続又は遺贈によって財産を取得した人が、その相続の開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、その取得した財産の価額(贈与を受けた時における価額)を相続税の課税価格に加算した上で相続税の総額や各相続人などの相続税額を計算することとされているからです。

 つまり、相続開始前3年以内にもらった財産については、相続財産に加算して相続税が課税されるのです。加算される贈与財産の範囲は、相続開始前3年以内に被相続人からもらったものすべてとなりますので、贈与税が課税されていてもいなくても関係なく、相続税の課税価格に加算して相続税を計算することになります。なお、納付した贈与税があれば、これを相続税から控除することができます。

 この制度は相続開始間際になって行った贈与には相続税の負担の軽減を目的として行われたものもあると考えられることから設けられている制度です。

 ただし、相続開始前3年以内の贈与財産を相続税の課税価格に加算する必要があるのは、あくまで被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者に限られます。相続の発生が近いと予想される場合であっても、相続により財産を取得しない孫への贈与をすれば、相続税の計算で加算することはありません。

 そのほか、(1)婚姻期間が20年以上である配偶者に対する「贈与税の配偶者控除」の適用により贈与税の課税価格に算入されなかった部分(最大2,000万円)(2)「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の適用により贈与税の課税価格に算入されなかった金額(3)「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」により非課税とされた部分については、相続開始前3年以内贈与であっても相続税の課税対象にはなりません。

 相続税の対策として暦年贈与を使ってコツコツと長期にわたって贈与を行うことは、とても有効です。相続開始前3年以内の贈与については加算されますが、3年経過してしまえば被相続人の財産から切り離されることとなるため、早く始めるほど効果が期待できます。

#13 相続の承認、放棄

 相続が発生した場合、相続人(配偶者、子など)が相続について単純承認をすると、被相続人に属した一切の権利、義務を承継することになります。
 しかし、被相続人の権利義務一切というと、その中にはプラスの財産もありますがマイナスの財産もあり、場合によってはマイナスの方が大きいため、相続人がマイナスを負担しなければならないことも起こり得ます。
 このような場合にも、相続人が相続を拒否できないとすると、相続人は、自分の財産で被相続人の債務を支払わなければならないことになります。

 上記のような場合のことを考えて、民法では相続人は、他の相続人の意思に関係なく、単独で相続の放棄ができるという制度を定めました。
 「放棄」というのは、被相続人の財産も債務も含めてすべて相続されないこととするものです。相続人とすれば、被相続人の財産の方が債務よりも大きければ相続し、反対であれば相続したくないと考えるのが人情というものです。民法はそういう制度として「限定承認」という制度も定めています。
 この「限定承認」というのは、相続人が、被相続人の財産の範囲内で、被相続人の債務が財産より大きくても、それ以上払う必要はありませんし、逆に債務を支払って残りがあれば、その残余の財産について相続を受けられることになります。

 放棄は、熟慮期間内(相続の開始があったことを知ったときから3か月以内)に、放棄をしようとする人が、家庭裁判所にその旨を「申述」して行うこととされています。
 一方、限定承認も、熟慮期間内に家庭裁判所に「申述」する点は同様ですが、限定承認は共同相続人全員が共同でなければすることができないということ、また家庭裁判所に「申述」する際に被相続人の財産、債務の状態につき、財産目録を作成して提出しなければならないという点が放棄と異なります。

 「単純承認」をすると、被相続人の財産をすべて引き継ぐことになりますので、もし相続財産中債務が債権をこえていれば、自分の財産から相続した債務を返済しなければなりません。熟慮期間の3か月を経過してしまった場合のほかに、遺産を処分した場合や、限定承認または相続の放棄をした後に相続財産の全部または一部を隠匿したり、自分のために消費したり、または悪意で相続財産の目録中に記載しなかった場合でも、単純承認したものとみなされます(法定単純承認)。

#12 短期間に重ねて相続があった場合

 平成27年から相続税の基礎控除が6割に縮小され、また相続税の最高税率が引き上げられたことにより、今後ますます相続税の負担が増えることが予想されます。さらにその相続の時から次の相続の時までの期間が短期間の場合には、同一の財産について何回も相続税の課税を受ける結果となり、その税負担は極めて重いものになります。

 このように短期間に重ねて相続があった場合には、前回の相続において課税された相続税額(1年につき10%の割合で逓減した後の金額)を、後の相続の際に課せられる相続税額から控除することができる制度(相次相続控除)が設けられています。

 相次相続控除が受けられるのは、次のすべてに当てはまる人です。
 (1):被相続人の相続人であること
 (2):その相続の開始前10年以内に開始した相続(第一次相続)により、被相続人が財産を取得していること
 (3):その相続の開始前10年以内に開始した相続(第一次相続)により取得した財産について、被相続人に対して相続税が課税されていること

 この制度は、相続又は遺贈により財産を取得した者が無制限納税義務者又は制限納税義務者(前号コラム「相続税の納税義務者」参照)のいずれかである場合にも適用されますが、上記(1)の要件にあるように、この相次相続控除が受けられるのは、相続人に限られているため、相続の放棄をした者及び相続権を失った者は、たとえ遺贈によって財産を取得した場合であっても、この控除は受けられないことになっているので注意が必要です。


◇具体的な計算方法は以下の国税庁HPを参照して下さい。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4168.htm

#11 相続税の納税義務者

 相続税の納税義務者は、相続または遺贈により財産を取得した個人となります。財産を取得したときに日本国内に住所を有しているか否か、また日本国籍を有しているか否かで無制限納税義務者と制限納税義務者に区分されます。相続税法では納税義務者について次のように定められています。

1.居住無制限納税義務者
 相続または遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有するもの

2.非居住無制限納税義務者
 相続または遺贈により財産を取得した次に掲げる者で、その財産を取得した時において日本国内に住所を有しないもの
(1)日本国籍を有する個人の場合:その個人またはその被相続人がその相続開始前5年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある場合に限る。
(2)日本国籍を有しない個人:被相続人がその相続開始の時において日本国内に住所を有していた場合に限る。

3.制限納税義務者
 相続または遺贈により日本国内にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有しないもの(非居住無制限納税義務者に該当する者を除く。)

4.特定納税義務者
 贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した個人(上記無制限納税義務者および制限納税義務者に該当する者を除く。)

 相続税の納税義務者は、原則としては相続又は遺贈により財産を取得した個人ですが、個人以外の人格のない社団等や持分の定めのない法人でも個人とみなされて納税義務者となることがあります。

(人格のない社団等に納税義務が生じる場合)
 人格のない社団等に対し財産の贈与、遺贈または設立のための提供があった場合には、その人格のない社団等を個人とみなして贈与税または相続税を課する。

(持分の定めのない法人に納税義務が生じる場合)
持ち分の定めのない法人に対し財産の贈与、遺贈または設立のための提供があった場合において、その贈与、遺贈または提供によりその者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税または贈与税の負担が不当に減少すると認められるときは、その持分の定めのない法人を個人とみなして、贈与税または相続税を課する。


(参照:国税庁タックスアンサー)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4138_qa.htm

#10 相続税の加算

 相続または遺贈により財産を取得した人が、一親等の血族又は配偶者以外であった場合、その人はその算出相続税額に2割加算した額を納めることになります。
 一親等の血族とは、被相続人の父母、子、養親、養子となります。被相続人の子が相続開始以前に死亡していたり相続権を失ったため、代襲相続人となった孫も含まれます。
 したがって、血縁関係者以外の者はもちろんのこと、被相続人の兄弟姉妹、甥姪も2割加算の対象となります。
 気を付けなければいけないのが、養子にした孫です。養子は一親等の血族ですが、被相続人の直系卑属が養子となっている場合(代襲相続人を除く)は2割加算の対象です。孫を養子にすると、相続を1回飛ばしてしまうことになるため税負担の調整がされています。
 また、相続時精算課税の適用を受けていた養子が、相続開始の時において離縁され、一親等血族に該当しなくなった場合は、その相続税額のうち、離縁前の期間に取得した相続時精算課税適用財産の価額に対応する相続税額は2割加算の対象となりません。
 孫でも相続時精算課税の適用を受けることができますが、相続時に持ち戻した際、相続税の計算では2割加算の対象となってしまうため、慎重に考える必要があります。

#9 相続財産から控除できる債務

 相続税を計算するとき、被相続人が残した借入金や未払金などの債務と葬式費用を遺産総額(相続時精算課税の適用を受ける贈与財産がある場合には、その価額を加算します。)から控除することができます。


(参照国税庁タックスアンサー)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4126.htm
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4129.htm


1.  遺産総額から控除することができる債務
◆ 債務
 差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。なお、被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることとなった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として遺産総額から控除することができます。
 ただし、相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることとなった延滞税や加算税などは遺産総額から控除することができません。
また、医療費については、死亡前に支払った医療費は被相続人の準確定申告で医療費控除の対象となりますが、死亡後に支払った医療費は準確定申告の医療費控除の対象とはなりませんが、債務として遺産総額から控除することができます。

◆葬式費用
 葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。ただし、葬式費用に何があたるかについて相続税法上はなんら定められていませんので、あいまいな概念になっております。
そのため、通達や社会通念にしたがって判断することとなります。

◇ 葬式費用となるもの
(1) 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用
(3) 火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
(4) お通夜などにかかった費用
(5) 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用

◇ 葬式費用とならないもの
(1) 香典返しのためにかかった費用
 ※ 香典について社会通念上相当範囲内では贈与税も相続税がかからないため、香典返しについても葬式費用に含まれません。
(2) 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用
(3) 初七日や法事などのためにかかった費用
 ※ 葬儀とは異なり死者の追善供養のために営まれるものであるため葬式費用に含まれません。ただし、告別式と同日に行う初七日の繰り上げ法要などは控除対象となります。

2. 遺産総額から控除することができない債務
 被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産(メールマガジン前号参照)に関する債務は、遺産総額から控除することができません。

#8 相続税がかからない財産

 相続税では、原則として、相続や遺贈によって取得した財産のすべてが課税対象となりますが、その財産の性質、国民感情や社会政策的見地などから課税の対象とするには適当でないと考えられる財産については、相続税の課税対象から除くことにしています。これを相続税の非課税財産といいます。


(参照:国税庁タックスアンサー)
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4108.htm


 「墓地、仏壇、仏具など」は非課税財産としてよく知られています。これらの財産は生前に取得すれば相続税の課税対象外となりますが、相続後にこれらの財産を取得しても相続税が安くなるなどの特例は一切ありませんので、生前の手当を考える必要があります。ただし、広大な墓地や黄金の仏像などを購入した場合は非課税財産とは認められないこともありますからご注意ください。また、自宅の敷地にお地蔵さんやお稲荷さんがある場合、その敷地も非課税とする改正が行われています。(非課税とするために建立したものなどは除かれます)
 この他、「申告期限までに国若しくは地方公共団体又は公益社団・財団等に寄附した財産」も非課税財産となります。これについては、被相続人の生前の意思に基づいて行われることも多いと思いますが、その贈与によって贈与者又はその親族その他これらの人と特別の関係にある人の相続税や贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合は非課税とならない事や、相続財産を処分した代金を寄附しても相続税は非課税とならないなどの点に注意が必要です。
 このように、お墓や寄附などの非課税財産についても、非課税財産として認められるためにどのような点に注意しておくべきかを事前に確認しておくことが重要です。

#7 遺言によってできること

 遺言は、遺言をする人が生前にした意思表示を、遺言者の死後に効力を発生させるものとして法律上認められた行為です
 遺言書にはいろいろな種類があり、代表例としましては「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。(平成24年7月号FPの窓「遺言書がもたらす意義」を参照)
 民法では、満15歳に達した後は誰でも、意思能力(一応の判断力)のある限り、遺言をすることができると定められており、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人であっても単独で遺言ができることとされています。
 ただし、遺言によってどんなことでもできるわけではありません。
 民法上、遺言できる内容は決められており、それ以外のことを遺言の内容としても、法律上効力が発生することはありません。

 民法で定められた遺言の内容を列挙すると下記の通りです。

(1) 認知
 生前に戸籍法の定めるところにより届け出て認知をすることもできますが、遺言によっても認知することができます。

(2) 遺贈
 遺贈には包括遺贈と特定遺贈があり、包括遺贈とは遺産全体に対する分量的割合で行われる遺贈(遺産の3分の1など)をいい、特定遺贈とは、特定の財産(〇〇銀行の預金や△△の土地など)を与えることを内容とする遺贈をいいます。

(3) 後見人、後見監督人の指定
 未成年者に対して最後に親権を行う者(共同親権者がいるときは指定できません)は、遺言で未成年者のために後見人および後見監督人を指定できます。

(4) 廃除およびその取消
 相続人が、被相続人を虐待したり、重大な侮辱を加えたとき、そのほか著しい非行があったときは、被相続人はその相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。逆に家庭裁判所で廃除の審判がなされた相続人について、その取消を請求することができます。
 被相続人は、この廃除または廃除の取消の意思表示を遺言ですることができます。

(5) 相続分の指定、指定の委託
 相続分は、民法で定まっていますが、被相続人はこれと違う相続分を遺言で定めることができ、また、第三者に相続分を定めるよう委託することができます。
 ただし、いずれも遺留分の規定に反することはできません。

(6) 遺産分割方法の指定、指定の委託
 被相続人の財産を、相続人の誰に何を与える、というように具体的に定めることができます。また、その分け方を第三者に委託することもできます。

(7) 遺産分割の禁止
 相続開始から5年以内に限り、遺産を分割することを禁止することができます。

(8) 相続人担保責任の指定
 遺産の分割をすると、各相続人は個々の財産、不動産などの債権を取得します。しかし、この取得した財産に問題があって本来の価値がない場合があります。この場合について、民法911条から913条は各相続人が相続分に応じてこれを担保することを定めています。遺言者は、この規定と異なった定めを遺言ですることができます。

(9) 遺言執行者の指定、指定の委託
 遺言の内容を実行してくれる人を指定し、または第三者にその指定を委託することができます。

(10) 遺贈の減殺方法の指定
 遺贈が、遺留分の規定に反しているときは、遺留分権利者の減殺の意思表示により、遺留分を侵害している限度で効力を失います。そして、いくつかの遺贈があるときは、その目的物の価額の割合によって減殺の効力があるとされています。遺言者は、この規定と異なって、減殺がされる場合の順序方法などを遺言で定めておくことができます。

#6 相続税がかかる財産の範囲

 「相続税がかかる財産」は、原則として相続や遺贈によって取得した財産です。 このほか、相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産、相続開始前 3年以内に被相続人から暦年課税に係る贈与によって取得した財産、生前の被相続人から相続時精算課税 に係る贈与によって取得した財産についても、相続税がかかる財産に含まれます。

 相続税の課税対象となる財産で主なものは次のとおりです。

(1)相続や遺贈によって取得した財産(本来の相続財産)
 被相続人が相続開始の時において有していた土地、建物、株式や公社債などの有価証券、預貯金、現金、宝石や骨董品などのほか、貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる全ての財産が相続税の課税対象となります。
 そのため、日本国内に所在する財産のほか、日本国外に所在する財産も相続税の課税対象となります。
 なお、財産の名義にかかわらず、被相続人の財産で家族の名義となっているものや無記名のものなども相続税の課税対象となります。(平成26年11月号メールマガジン相続ミニコラム「名義預金にご用心」を参照)

(2)みなし相続財産
 民法上は本来の相続や遺贈によって取得した財産でなくても、実質的には相続や遺贈によって財産を取得したことと同様な経済的効果があると認められる場合には、相続税法では、課税の公平を図るために、その受けた利益などを相続又は遺贈によって取得したものとみなして、相続税の課税財産としています。
 例えば、被相続人の死亡に伴い支払われる「生命保険金」(被相続人が負担した保険料に対応する部分に限ります。)や「退職金」などが、これに相当します。
 ただし、「生命保険金」や「退職金」のうち、一定の金額(500万円 × 法定相続人の数)までは非課税となります。

(3)被相続人から取得した相続時精算課税適用財産
 被相続人から生前に贈与を受け、その際に相続時精算課税を適用していた場合、その財産は相続税の課税対象となります。

(4)被相続人から相続開始前3年以内に取得した暦年課税適用財産
 被相続人から相続などによって財産を取得した方が、被相続人が亡くなる前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産(上記(3)を除く。)は、相続税の課税対象となります。

#5 相続が発生した場合の被相続人に係る確定申告(準確定申告)について

 所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得に対する税額を算出して翌年の2月16日から3月15日までの間に申告および納税をすることになっています。
 しかし、年の中途で死亡した人の場合は、相続人が、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。そのため、通常の確定申告期限とは異なります。これを準確定申告といいます。準確定申告をする場合には、次の点に注意してください。

(1)確定申告をしなければならない人が確定申告期限までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合
 この場合の準確定申告の期限は、前年分、本年分ともに相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

(例)平成26年10月1日に亡くなった場合
    平成26年分の申告期限は平成27年2月1日

   平成27年2月1日に亡くなった場合
    平成26年分、27年分ともに申告期限は平成27年6月1日

2)納税義務者および申告書の提出先
 申告すべき人が亡くなっているため、相続人に申告および納税の義務があります。ただし、申告書の提出先は相続人の納税地ではなく、被相続人の住所の所轄税務署となります。

(3)相続人が2人以上いる場合
 原則は、相続人全員が共同で準確定申告書を提出することになります。
 ただし、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。この場合、当該申告書を提出した相続人は、他の相続人に申告した内容を通知しなければならないことになっています。

4)準確定申告における所得控除の適用 
イ.医療費控除の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った医療費であり、死亡後に相続人が支払ったものを被相続人の準確定申告において医療費控除の対象に含めることはできません。

ロ.社会保険料、生命保険料、地震保険料控除等の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った保険料等の額です。

ハ.配偶者控除や扶養控除等の適用の有無に関する判定は、死亡の日の現況により行います。

(5)準確定申告により納付した税額または還付金額
 準確定申告により相続人が納付した税額は、相続税において債務として遺産総額から控除することができます。
 また、準確定申告により還付された金額は、相続財産に含まれます。ただし、還付加算金については相続人が準確定申告をすることにより発生したものなので、相続人の所得税の対象になり、相続財産には含まれません。


(参照)
国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2022.htm

#4 法定相続人と法定相続分

 メールマガジン10月号の相続税ミニコラムで相続人についてご紹介いたしましたが、今回はもう少し詳しくお伝えしたいと思います。

法定相続人
 相続が開始したときは、民法で定められた人が相続人となります。これを法定相続人といいます。法定相続人になる人は配偶者と血族相続人です。死亡した人の配偶者は常に相続人となりますが、血族相続人は順位が定められており、第1順位で死亡した人の子供、第2順位で死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)、第3順位で死亡した人の兄弟姉妹が配偶者と一緒に相続人になります。この順位は上の順位の相続人がいない場合に繰り上がっていきます。
 また、第1順位(子供)と第3順位(兄弟姉妹)の相続人が死亡、欠格、廃除(放棄は除かれます。)によって相続権を失った場合、その人の子が代わって相続人となります。これを代襲相続といいます。第1順位(子供)の相続人の子が相続発生前に死亡している場合は孫が、孫も死亡している場合はひ孫がといった様に下りていきますが、第3順位(兄弟姉妹)の場合は、その人の子、つまり甥姪までの代襲で止まり、甥姪の子には代襲されません。また、代襲相続は死亡した人の直系卑属でなければならないので、養子縁組前に出生していた養子の子にも代襲されません。第2順位は直系尊属で親等の近いものを先にするとありますので、代襲という考え方ではなく、上の代が相続人になっていきます。

法定相続分
 民法では法定相続人が財産を相続する割合を定めています。これを法定相続分といいます。これは遺産分割協議がまとまらない場合の按分で、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。法定相続分は、相続人が配偶者と子供である場合は配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2、配偶者と直系尊属である場合は配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3、配偶者と兄弟姉妹である場合は配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4となります。
 配偶者がいない場合は、血族相続人が優先順位の高い順より100%の割合で相続します。

#3 相続税の基礎控除額

 相続税は、亡くなった人の財産まるまるに対してかかるわけではありません。相続税は、正味の相続財産から「基礎控除額」を引いたものにかかります。現在、「基礎控除額」は「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」で計算します。
 そのため亡くなった人の財産が基礎控除以下なら相続税は課税されませんし、また、相続税の申告をする必要もありません。亡くなった人の財産が基礎控除額を超えると相続税が課税されます。この「基礎控除額」の引下げの改正がいよいよ来月にせまっています。

 平成25年度税制改正において、“相続税については、地価が大幅に下落する中においても、バブル期の地価上昇に対応した基礎控除額や税率構造の水準が据え置かれた結果、課税割合が低下する等、富の再分配機能が低下している。こうした状況を受けて、課税ベースの拡大と税率構造の見直しを行う。”と書かれており基本的な考えを示しています。
 基礎控除額の変遷については、昭和50年改正「2,000万円+400万円×法定相続人数」、昭和63年改正「4,000万円+800万円×法定相続人数」、平成4年改正「4,800万円+950万円×法定相続人数」、そして平成6年改正から現在の「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」となっており、物価・地価状況を鑑み改正が行われてきました。そこで、物価・地価が現在と同等であった時期(昭和50年代半ば)に適用されてきた水準と同等となるようにあるべき水準に見直しが行われたのです。

 具体的には、例えば相続財産が8,000万円で、相続人が配偶者と子2人の場合
【改正前】
基礎控除は5,000万円+1,000万円×3名で8,000万円ですので、
8,000万円-8,000万円=0
相続税は0円

【改正後】
基礎控除は3,000万円+600万円×3名で4,800万円ですので、
8,000万円-4,800万円=3,200万円
相続税が約175万円(法定相続分により相続したものとして相続税額が計算)

 このように改正後は基礎控除額が4割も縮小されてしまいますので、これまで相続税の申告が不要であった人でも改正後は申告が必要な人が増加します。現在、相続税の申告割合は4%(100人亡くなると4人)程度となっていますが、この改正により6%程度に上昇するといわれています。また、基礎控除の引き下げとともに最高税率を引き上げる税率構造の見直しも行われます。

 ※次回アズールセミナー(H26.12.12開催)では、この基礎控除額の引き下げや税率構造の引上げ等の改正についても詳しく講演します。是非ご参加ください!

The 7th azure season seminar
増税直前平成27年相続税改正~その傾向と対策~

#2 名義預金にご用心

 相続税の税務調査で、申告漏れ財産として最も多く否認されている財産・・・・それは、「現金預貯金」です。この中にはもちろん相続人本人名義の預貯金がありますが、申告漏れとして否認される預貯金の多くは「名義預金」だといわれています。

 ここで問題になる「名義預金」とは、本当は亡くなった人の財産なのに、単に名義だけが配偶者や子となっているために相続財産として申告されていない預貯金です。

 相続税の調査では、家族名義の預金も調査されます。例えば配偶者に多額の預金がある場合、調査官は配偶者のこれまでの収入や実家の相続の有無など、配偶者の財産形成の過程を徹底的に調べ、本当の所有者を確認します。名義人本人の財産については、被相続人の財産とされてしまわないよう、日頃から財産を区別して、自ら財産形成の根拠を示せるような準備が必要です。

「名義預金だ!」と税務署に指摘されたとき、「この預金は10年前に夫から贈与されたものだ」「贈与には時効があるから、贈与税もかからない」と主張する人がいます。確かに贈与税には時効がありますが、何年前から名義が被相続人以外の家族になっていたとしても、実際に贈与の事実が確認できないと判断されれば、名義預金として相続財産とされてしまいます。このような結果にならないためにも、確実な贈与の実行と証拠の保存が必要です。

 ※次回アズールセミナー(H26.12.12開催)では、この「名義預金」についても詳しく講演します。是非ご参加ください!

The 7Th azure season seminar
増税直前平成27年相続税改正~その傾向と対策~

#1 相続人の範囲と順位

 皆様もご承知の通り、平成27年1月から相続税法が改正され、最高税率の引き上げや基礎控除の引き下げが行われ、大増税となると言われています。そこで、税理士法人アズールでは、相続税について、当法人の相続税担当のスペシャリストから、相続税ミニコラムをお届けする運びとなりました。

 初回は、相続人の範囲と順位についてお話させていただきます。

【相続人の範囲と順位】
 ある人がお亡くなりになった場合、誰が相続人となるのか、迷うときがあるかと思います。
 例えば、父、母、子3人の5人家族の場合で、仮に父が亡くなった場合を考えますと、亡くなった父を「被相続人」といい、配偶者である母は常に「相続人」となります。
 次に被相続人の子は相続人となりますので、子3人も相続人となりますが、もしも、被相続人に配偶者も子もいない場合には、被相続人の父母が相続人となります。
 (父母がおらず、祖父母がいるときは、祖父母が相続人となります。)
 被相続人に子も父母、祖父母もいないときは、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
 一口に相続人といっても、結構複雑ですね。